minolta auto wide
マニュアル
その2
露出の決定
1958年の発売当時のリリースには
-「世界で初めて完成!」-
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-「2つの指針を合わせるだけで自動的に適正露出にセットされます」-
と大見出で謳われています
世界初であったのかは別としても、内蔵露出計にシャッターと絞りの両方を連動させる仕組みを備えた最初期のカメラであった事は間違いのないところです。設定を連動させるための操作方法からは〝 初めて 〟を試みた製品ならではの工夫を感じる事ができます。
露出計
連動露出計は、電気的に独立して動作するメーター針と、シャッター速度と絞り設定のダイヤル操作で動くディスク状の部品で構成されています。
露出計の受光部はカメラ正面の右手側上部にあります
露出計の受光素子にはセレン光電池が使われていて、受光部の窓は複眼レンズになっています
露出計の表示窓はトップカバーの上面の右端に位置しています
受光部に光を受けると受光素子のセレン光電池が発電します。メーターの指針はその発電量に応じて振れる検流針となっていて、他に電源を必要としません。
このメーター針そのものは、カメラ操作による機械的な制御を受けずに独立して動作します。
– 感度設定 –
メーター針の指標となる ▲ マークのあるディスクに、フィルム感度を表示する部分があります。ディスクは二重になっていて、重なった上のディスクに設けられた開口部から下のディスクに記された数値を覗かせて表示させます。
窓の外からディスクの上の層だけを回す事が出来るツマミがあります
ツマミを使ってディスクの上の層をスライドして、開口部に使用するフィルム感度の表示が現れる位置にします。
ディスクがスライドした分だけメーターの指標となる ▲ マークが動いて、使用するフィルム感度に応じた EV値 の補正となります。
感度表示の規格単位には ASA だけを表示するものと ASA と DIN 両方を表示する製品があります。
詳しくは
の項にまとめました。
シャッター
搭載しているシャッターは《 CITIZEN MVL 》というもので、発売時のリリースでは〈 minolta auto wide 〉のセールスポイントの一つとして次のような見出しを付けています。
– 日本最初の本格的ライトバリューシャッター –
– シチズンMVL B , 1 〜 1 / 500秒、等間隔倍数系列、セルフタイマー内蔵、 –
特別なものには見えないスペックですが、この項で紹介している操作方法にあたる〈 ライトバリュー・システム 〉 と、ダイヤルとホイールを用いる〈 minolta auto wide 〉の操作方法とを実現する上では不可欠なスペックです。
シャッター速度が〝 倍数系列 〟である事は、「 ライトバリュー : Light Value 」を設定する上では必須です。シャッター速度の倍数と絞りの段数が、露光における相関関係にある事がその理由です。
そしてシャッター速度が〝 倍数系列 〟である事と併せて、〝 等間隔 〟( 目盛り )である事が、〈 minolta auto wide 〉の ダイヤル と ホイール による設定操作をする上で必要になる、もうひとつの欠かせない要素になっいます。
〈 minolta auto wide 〉はシャッター速度を『 等間隔 』『 倍数系列 』で設定する事が可能なシャッターを装備する事によって、〈 ライトバリュー・システム 〉における完全な操作性を獲得しています。
〈 ライトバリュー・システム 〉 を採用している他の製品の中には、シャッター速度が倍数系列ではなかったり、操作するリング等にある速度目盛りが等間隔になっていないものがあります。
シャッター速度が倍数系列でない製品では、露出量を変えずにシャッター速度と絞りを同時に設定変更する事が出来ても、設定値自体に「 ライトバリュー 」が適用出来ません。
また、シャッター速度の設定目盛りが等間隔でない場合、同時に設定変更される絞りの方では等間隔での段数が変更され、その分を補正するための操作を後から加える事が必要となり〈 ライトバリュー・システム 〉での設定操作が出来ないものがあります。これでは「 ライトバリュー 」に基づいた同じ露光量になる組み合わせで、絞りとシャッター速度を同時に設定変更する事を可能としている 〈 ライトバリュー・システム 〉 の利便性が損なわれてしまいます。
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このような製品の例を
で紹介しています
絞りの設定操作 / シャッター速度の設定操作
『 絞り 』と『 シャッター速度 』を設定する操作は、背面右手側の上部にあるダイヤルを使って行います。
一つの部品に見えるダイヤルは二段式になっていて、側面に滑りどめが施されている1段目のダイヤルと、サークル状の滑りどめが上部に施されている2段目のホイールで構成されています。
1段目のダイヤルを回すと2段目のホイールも一緒に動いて同時に設定操作されますが、1段目のダイヤルと2段目のホイールを別々に操作する事もできます。
1段目のダイヤルだけを操作する場合には、2段目のホイールが一緒に回転しないようにホイールを押さえておいて、側面から1段目のダイヤルを回転させます。親指でホイールを押さえて人差し指の腹を前後させるようにすると操作しやすくなります。
2段目のホイールだけを操作する場合はサークル状の滑りどめが施されている部分を親指の腹などで回転させて行います。ホイールはスムーズに動いて回転操作は片手で容易に行う事ができます。
上の画像よりもホイールの高さが低く、部品全体がフラットな感じになっているタイプの製品があります。
このタイプの製品では、1段目のダイヤルだけを操作する場合に片手では少し難しく感じられ、両手で行う方が容易です。詳しくは
の項にまとめました。
– 絞りとシャッター速度の設定表示 –
露出計の窓の隣にカマボコ状のレンズの乗った窓があり、上下の表示に絞りとシャッター速度の値を表示します。それぞれの数値が記されたドラム状の部品が ● マークを挟んだ上下にあり、これが回転して表示が変更されます。
– 絞りの設定と表示 –
上の段の表示が絞りの値です
絞りの設定は2段目のホイールを回して操作します
絞り羽根はクリックストップせず無段階の設定ができます。
無段階に設定できることで、内蔵露出計のメーターに正確に合わせる事が出来ます。
ホイールの回転には、歯車の機械的動作による小さなクリック感と、設定操作によるギアのトルクを感じる事が出来ます。
この操作感を利用して、絞りの表示が指標のセンターになる所定の位置に合わせる事が可能で、規定のFナンバーに正しく設定する事が出来ます。
設定できる値は絞り開放の f 2.8 から 最小の f 22 までの 2.8 4 5.6 8 11 16 22 になっています。
このようにして、無段階の絞り設定と規定のFナンバー設定をする両方の操作性が確保されています。
1段目のダイヤル操作によっても絞りの設定変更が出来ます。このときはシャッター速度の変更を伴う〈 ライトバリュー・システム 〉での設定操作となります。
– シャッター速度の設定と表示 –
下の段の表示が絞りの値です
シャッター速度はダイヤルを回して変更します
設定できるシャッター速度は B と 1 2 4 8 15 30 60 125 250 500 (1/s) です。
絞りの値が設定の範囲内にあるときは 〈 ライトバリュー・システム 〉によって、1段目のダイヤルと2段目のホイールは一緒に回転してシャッター速度と絞りの値が同時に設定変更されます。
シャッター速度だけの設定操作をする場合は、ホイールが一緒に回転しないようにして1段目のダイヤルだけを操作して行います。
〈 ライトバリュー・システム 〉による操作で絞りが設定範囲の限界に達しても、シャッター速度が設定範囲にあれば1段目のダイヤルだけが回転して、シャッター速度のみ設定変更されます。
露出計との連動設定と表示
露出計に設定を連動させる方法は、ディスク状の部品に記されている ▲ マークを露出計のメーター針が指す位置になるようにダイヤルを操作して行います。
ディスク状の部品にある ▲ マークをメーター針の指標として用いた 《 追針式 》 の露出計連動カメラになっています。
ダイヤルとホイールのそれぞれの設定操作に応じてディスクが連動した動きをします。
ディスクに記されている ▲ マークをメーター針の指す位置に合わせる操作で、絞りとシャッター速度の組み合わせが露出計の計測に一致した設定となります。
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露出計の窓の中には Light value の表記があり、ディスクの外周を目盛りにしたプレートが取り付けてあります。設定の〈 ライトバリュー( LV )〉をディスクの ● マークの位置で示します。
マークは二重構造のディスクの下の層に印されていますので、上の層のディスクはフィルム感度の設定でディスクをスライドしてもマークの表示が隠れない形状になっています。
画像左 : LV 表示機能なし画像右 : LV 表示機能あり
Light value の表示プレートは取り付けられていない製品があり、表示できる機能が異なっています。
詳しくは
の項にまとめました
〈 ライトバリュー:Light Value ( LV )〉の表示機能があるタイプの連動露出計には、LV を示す 2 から 18 までの目盛が付けられています。
開放から最小までの絞り値 f2.8 〜 f22 と、設定可能なシャッター速度 1 〜 1/500(s) の組み合わせによる LV は 3 〜 18 です。
絞り開放の f2.8 でシャッター速度を B に設定した時に指標が目盛の 2 を指しますが、これは設定の LV を表していません。
LV2 は、シャッター速度の設定が可能であれば、本来は 2(s) に設定した時の LV です。
操作上これが B に設定する位置にあたっています。
設定操作
minolta auto wide は
《 ライトバリュー・システム 》
で設定変更をするカメラです。
〈 ライトバリュー( LV )〉はシャッター速度と絞りの組み合わせによって決まる露光量を、基準となる数値に置き換えて指標化したもので、《 ライトバリュー・システム 》は 〝 シャッター速度 〟と〝 絞り 〟を、露光量が一定になる組み合わせ( 同じLV )で同時に設定変更するものです。
〈 minolta auto wide 〉では、ホイールと一体になっているダイヤルを操作する事で、シャッター速度と絞りが同時に設定変更されます。
以下の設定操作サンプルでは、ディスク外周の目盛で ● マークの位置によって ライトバリュー( LV )を表示する製品での操作を例にしています。
左画像には使用フィルム感度が ASA = 100 / DIN = 21° 設定は 絞り = f 16 シャッター速度 = 1 / 30 (s) で ライトバリュー( LV )= 13 になっている事が表示されています。
このときメーター針と ▲ マークはズレていて、設定は露出計に合っていません。左画像の設定から2段目のホイールだけを右に回して、絞りを f 16 から f 8 にした右の画像ではディスクが反時計回りに動いてメーター針に ▲ マークが一致しました。
同時に ● マークも動いて設定された LV の値が指し示されます。この操作で 13 にあった目盛が 11 になりました。
これで露出計の計測に絞りとシャッター速度の設定が合っている事になります。
ここで、シャッター速度を 1 / 30 (s) より早い設定にしたいときはダイヤルを右に回して、また遅く設定したいときは左に回して設定変更します。
シャッター速度を速くした左画像は 1 / 60 (s) になり、シャッター速度を遅くした右画像では 1 / 15 (s) へと設定が変わっています。
ホイールが一緒に回りそれぞれの絞りが f 5.6 と f 11 へと同時に設定変更されます。
このときメーター針の位置にある ▲ マークは動かず、 ● マークが示す LV 11 は維持されて露出計と一致した設定が保たれている事を表示しています。
ここで更に、シャッター速度を早く、または遅く設定したいときにはダイヤルを回して設定変更をします。
シャッター速度を速くした左画像は 1 / 125 (s) になり、シャッター速度を遅くした右画像では 1 / 8 (s) へと設定が変わっています。
同時にそれぞれの絞りが f 4 と f 18 へと設定が変更されます。
このときにもメーター針の位置にある ▲ マークは動かず、 ● マークが示す LV 11 は変わらず維持されて設定が保たれている事を表示しています。
更にもう一段シャッター速度早く、または遅く設定するためにダイヤルを回して変更していきます。
シャッター速度を速くした左画像は 1 / 250 (s) になり、遅くした右画像では 1 / 4 (s) へと設定が変わります。
同時にそれぞれの絞りは f 2.8 と f 22 へと設定が変更されます。
このときにもメーター針の位置にある ▲ マークは動かずに ● マークが指す LV 11 は維持されて設定が保たれています。
この時点で絞り値は、解放の f 2.8 と最小の f 22 となり設定範囲の限界に達しました。
ここから更にダイヤルを回してシャッター速度を 1 / 500 (s) へ速くした左画像と、遅くして 1 / 2 (s) へと設定変更を進めた右画像では、それぞれの絞りは解放となった f 2.8 と、最小まで絞った f 22 のままでシャッター速度の設定だけが変更されました。
シャッター速度と絞りの設定が 同時に変更出来なくなった このときに、ディスクが動いて ▲ マークがメーター針からズレて 設定が露出計の計測と一致しなくなった 事を示しました。
LV の値を示す ● マークが指す目盛りは、シャッター速度を早くした設定の左画像では LV 11 から LV 12 になり、遅く設定した右画像では LV 11 から LV 10 へと、設定の LV が変更された事を表示しています。
高速側のシャッター速度はここまでの設定操作によって最高速の 1 / 500 (s) となり、これ以上はダイヤルを右に回す事はできません。この状態でホイールだけを左に回して絞りを小さく設定していくと、ディスクは時計回りに動いて設定変更される LV は ● マークによって指示され続けます。
一方の低速側へはダイヤルを左に回して 1 (s) へとシャッター速度の設定変更をもう一段進める事ができます。このときにはディスクが反時計回りに動いて ● マークが 9 を指して設定変更後の LV の値を示します。
また、低速側に更にダイヤルをもう一段左に回して B (バルブ) へと設定する事ができます。
サンプルの画像ではメーター針に ▲ マークを合わせた後、シャッター速度を任意に設定するときの連動として説明しています。同時にこれを、絞りを任意に設定する連動として説明することもできます。
撮影者の意図によって絞り優先としても、シャッター速度優先としても露出計と連動した設定変更をすることができます。
入射光で測光する場合は、受光窓にアタッチメント式の「 ディフューザー 」を取り付けます。
- 「 ディフューザー 」は被せ式で、左右にあるクリップを受光窓側面のネジ穴に嵌め込みます。
- 内蔵露出計のメーターは単独で動作していますので、測光するポジションではメーター針の位置をゼブラ柄のガイドラインで確認しておき、設定操作を撮影ポジションで行うことが出来ます。
ここに紹介した、シャッター速度と絞りの操作に用いている〝 ダイヤル と ホイール 〟という『 インターフェース 』を備えた製品が〈 minolta auto wide 〉の他に製造される事はありませんでした。 〈 minolta auto wide 〉は〈 Minolta .A. 〉というカメラから発展した製品です。 の項で紹介しています。
他に同じ操作方法のカメラが無い事も〈 minolta auto wide 〉を特別な存在にしているように思えます。
〈 Minolta .A. 〉は、 レンズシャッターで機ありながら、シャッター速度を〝 鏡筒ではなく本体側から設定する 〟という特徴をもつカメラです。
〈 Minolta .A. 〉は1955年に発売され、同年発売の〈 Minolta .A – 2. 〉さらに1957年に発売された〈 MINOLTA SUPER .A. 〉へと発展していきます。
そして1958年に〈 minolta auto wide 〉が発売されます。
いずれの製品も、本体にシャッター速度を設定するダイヤルを備えたカメラであり、〈 minolta auto wide 〉に至っては〝 シャッター速度だけでなく、絞りの設定操作をも本体側で行う 〟ようになっています。
しかし〈 Minolta .A. 〉から始まるこの系統のカメラは〈 minolta auto wide 〉を最後にして、それ以降は登場する事なく途絶えています。関連した情報を
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