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minolta HI-MATIC と Ansco AUTOSET

コラム
minolta HI MATIC と Ansco AUTOSET

minolta Hi MATIC_Ansco AUTOSET
– 画像左 –
〈  Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉 

  minolta HI-MATIC  は、1962月に当時の《  千代田光学精工 株式会社  》が発売した135規格フィルムを使用する35㎜判のスチルカメラです。

この製品は、同社が 1960年に発売した〈  minolta Uniomat  〉の機構を発展させて、露出の決定を行う撮影設定を完全に自動化したカメラです。

minolta Hi MATIC

〈  minolta HI-MATIC  〉
1962発売

  minolta HI-MATIC  〉が実現した完全自動露出の仕組みは、〈  minolta Uniomat  〉では鏡筒の「  EVリング  」によるマニュアル操作で行なっていた「  追針式  」の連動方式『  ユニシステム  』を、『  EE( イーイー )  Electric Eye( エレクトリックアイ )』機構によって自動化したものになっています。

〈  minolta Uniomat  は、同社が『  ユニシステム  として紹介した操作方法が特徴的な製品で、鏡筒にはシャッター速度リングと絞りリングの代わりに「  EVリング  と呼ばれる操作リングを一つだけ持つカメラです。

  • 『 ユニシステム は、内蔵露出計のメーター針に「  EVリング  と連動して動く追針を合わせる操作のみで撮影設定が行えるというものです。
  • 「 EVリング による撮影設定は、シャッター羽根を全開にさせない事で絞り効果を得る仕組みを持つ『  OPTIPER UNI CITIZEN  』シャッターの機能によって実現しています。
  • 『  OPTIPER UNI CITIZEN  』 「  光量値シャッター 」 として  千代田光学精工 株式会社   が考案し、 《  シチズン時計 株式会社  と共同開発して完成させたプログラム式のレンズシャッターです。
    この機構は絞り羽根を持たず、シャッター羽根が絞りとしても機能します

『  ユニシステム  で設定変更される「  シャッター速度  「  絞り  の組み合わせは一定で、各シャッター速度ごとに絞り値となるシャッター羽根の開き量が決められていて、これが次の表にある組み合わせに調整されています。

 

 

〈  minolta Uniomat  〉
については

の項で紹介しています。

 

Minolta Uniomat _1960  minolta Uniomat  
1960発売

  HI-MATIC : ハイマチック  というカメラが紹介されるとき、この製品が達成した完全自動露出を実現したその機能についてよりも、アメリカの有人宇宙飛行ミッションで宇宙船に持ち込まれた事が関心を集めます。

露出を設定するためのマニュアル操作を一切必要とせず、プログラム式シャッターと連動する「  完全自動露出を実現したカメラ  」であった〈  minolta HI-MATIC  〉は同時に、アメリカ初の有人宇宙飛行計画《  Project Mercury( マーキュリー計画 ) 》で打ち上げられた宇宙船『   Friendship 7 ( フレンドシップ セブン )』から地球の姿を撮影した「  初めて宇宙に飛んだカメラ  」でもありました。

〈  minolta HI-MATIC  〉が発売された際の広告には、宣伝文句として次のような見出しがあります。

2月20日 宇宙旅行に成功したフレンドシップ7号で ミノルタ・ハイマチック が使用され ……

  Friendship 7  』が、アメリカ初となる有人地球周回飛行に成功したのは1962月20日の事で、この項のはじめに1962月に発売されたと紹介した〈  minolta HI-MATIC  〉の登場と時系列が前後する事になります。
当サイトで紹介する各製品の「 発売年 」と「 月 」は日本国内でのもので、メーカーの年表や発売当時の掲載広告に基づいています。

この当時、日本の製造メーカー各社は進出を果たしたばかりのアメリカでの販路と販売シェアの拡大を目指し、現地のフィードバックを受けて仕様変更したり改良を重ねた製品などを次々と送り出していました。
こうしたメーカー間の競争が、国内に先行してアメリカ市場に新製品が投入される背景となっていました。

1950年代半ば頃から、製造メーカー各社はアメリカでの販売網を構築するための足掛かりとなる支店や現地法人の設置を開始しています。
  千代田光学精工 株式会社  》がアメリカに駐在員を派遣したのは1954月の事で、この年の月にシカゴで行われたカメラショーへの出展を果たしています。
この時点でアメリカに販売拠点があり、現地に代理店をもっていたメーカーは1953月に現地法人「  Nippon Kogaku Inc.  」を設立していた《  日本光学工業 株式会社  》だけでした。
1955月に日本政府と写真業界とが出資して
日本貿易振興会JETRO( ジェトロ )」のニューヨーク ジャパントレードセンター内に『
 Japan Camera Information and Services Center( ジャパン・カメラ・インフォメーション・アンド・サービスセンター )』のオフィスが開設されると、日本の製造メーカー各社がアメリカへの本格的な進出に乗り出します。
ニューヨーク支店を195510月に開設した《  キャノンカメラ 株式会社  》をはじめ、1956年に《  小西六写真工業 株式会社  》が「  Konica Photo Corporation  」、1957年に《  八州光学精機 株式会社  》が「  Yashica inc.  」、1962年に《  理研光学工業 株式会社  》が「  Ricoh of America Inc.  」を設置するなど、各社が相次いで進出を果たしています。
《  千代田光学精工 株式会社  》が販売子会社の「  Minolta Corporation  」を設立して、ニューヨークにオフィスを構えたのは1959年の月でした。

〈  minolta HI-MATIC  〉の場合はこれとは少し事情が違っていて、国内に先行してアメリカ市場に向けて出荷された新製品という事ではありませんでした。
「  マーキュリー・アトラス6号  」のミッションで、その宇宙船『  Friendship 7  』に持ち込まれたのは〈  minolta HI-MATIC  〉とは異なる製品で、更に宇宙船内での使用を想定した改修がなされたものでした。

アメリカでの〈  minolta HI-MATIC  〉は、当時の《  千代田光学精工 株式会社  》が OEM( Original equipment manufacturing : 相手先商標生産  )をしていた《  GAF General Aniline & Film ) Corporation  》の製品〈  Ansco AUTOSET  〉として登場しています。

Ansco AUTOSET

  Ansco AUTOSET  〉
1961年発売

《  千代田光学精工 株式会社  》が OEM により生産した  Ansco AUTOSET  は、アメリカの《  GAFGeneral Aniline & Film ) Corporation  》が1961年に発売した製品です。

〈  Ansco AUTOSET  〉の正確な発売時期を確認できる資料を見出せていませんが、12月の日付けがある新聞資料にクリスマス向けの商品広告が載せられている事から、遅くとも1961年の12月までにはリリースされていたことになります。

その同じ広告には〈  ANSCOSET  〉という商品名のカメラが載っています。
この製品も〈  
Ansco AUTOSET  〉と同様に《  千代田光学精工 株式会社  》が OEM で製造したカメラです。
こちらは《  GAF Corporation  》が自社ブランドの『  Ansco  』銘を冠して商品化した〈  minolta Uniomat  〉をベースとした製品です。
〈  ANSCOSET  〉は1960年6月の日付けがある新聞広告の資料が残されていて、日本国内で1960年5月に発売された〈  minolta Uniomat  〉とほぼ同じ時期の発売であったようです。
〈  minolta Uniomat  〉が搭載した『  OPTIPER UNI CITIZEN  』シャッターを「 EE機構 」と連動させた『  CITIZEN UNI E  』シャッターによって撮影設定の自動化を実現したのが〈  minolta HI-MATIC  〉である事からすると、〈  ANSCOSET  〉と〈  Ansco AUTOSET  〉という製品名は、両機種がもつ機能面での関係性を端的に表しているといえます。


当時、宇宙船『  Friendship 7  』を打ち上げた「  マーキュリー・アトラス6号  」はアメリカ初の有人宇宙ロケットとして大きな注目を集め、発射台を望むビーチリゾートには7万5千人が詰めかけたほか、ラジオとテレビを通して1億人がその発射を見守ったといいます。
宇宙船は地球の周回軌道を3周飛行して帰還し、『
  Friendship 7  』に搭乗した「  
ジョン・グレン(  John  Herschel  Glenn,Jr. 」中佐は、地球周回軌道を飛行したアメリカで最初の宇宙飛行士となりました。
宇宙ミッションの後に「  ジョン・グレン  」中佐が『  Friendship 7  』から撮影した写真が公表され、撮影に用いられたと伝えられた《  Ansco  》のカメラが、その後まもなくして《  千代田光学精工 株式会社  》が製造した製品であると知られるようになります。

1989年にアメリカで出版された書籍  My bridge to AmericaDiscovering  the New World For Minolta   E.P.ダットンDutton (  日本語版『  日本的経営の成功 なぜ、アメリカで受け入れられたのか  』 楠本 定平 著 矢沢 聖子 訳   講談社( 1990 ) には、写真が『  Ansco  』のカメラで撮影された事が公表されてから、その製品が《  千代田光学精工 株式会社  》が製造した製品である事が伝わるまでの経緯が記されています。

同書によると、このとき事情がわかっていた《  GAF Corporation  》によって、そのカメラが〈  Ansco AUTOSET  〉である事が当時ニューヨークにあった《  Minolta Corporation  ミノルタ コーポレーション  》に知らされ、それが日本の《  千代田光学精工 株式会社  》に伝わったとあります。
その記述の中に、知らせが大阪の本社に伝えられた当時の様子を窺い知る事が出来る以下のような描写があります。

『 ………  ニューヨークから大阪に海外電報でニュースを伝えると、みんな呆然とした。ミノルタは自社のカメラであることを公表し、それがたちまち世界中に広がって、ミノルタが実際の製造元と認められた。これは日本で一大センセーションを巻き起こした。………  』

著者の「  楠本 定平  」氏は、1954年に《  千代田光学精工 株式会社  》が初めてアメリカに派遣した駐在員その人であり、また『  Friendship 7  』が打ち上げられた1962年の当時は帰国して輸出部長の職にあった人物です。
そしてこの書籍は、著者である同氏が《  ミノルタカメラ 株式会社  》のアメリカ法人《  Minolta Corporation : ミノルタ コーポレーション  》で
社長の職にあった1989年に出版されたものです。

このほか同書には、創業者で社長の「  田嶋 一雄  」氏が、〈  minolta HI-MATIC  〉によって商標の『  ミノルタ・カメラ  』が広く知られるようになった事を理由として、社名を《  千代田光学精工 株式会社  》から《  ミノルタカメラ 株式会社  》に改める決定をした、というエピソードが紹介されています。
〈  Ansco AUTOSET  〉が宇宙船で使用された事の反響が非常に大きなものであり、それが当時の《  千代田光学精工 株式会社  》にとってどれだけのインパクトとなったかを象徴的に物語るエピソードです。
《  千代田光学精工 株式会社  》は、196231日付けで《  ミノルタカメラ 株式会社  》に商号変更しています。

また、さらに同書では〈  Ansco AUTOSET  〉が『  Friendship 7  』のミッションで選定された経緯についても紹介していて、そこには宇宙飛行にカメラを持って行きたいと考えたのが「  ジョン・グレン  」中佐自身であることと、製品を入手した際のエピソードが、ユーモアのある小見出しを付けて次のように記しています。

| 宇宙飛行士がドラッグストアで買ったカメラ |
………  アメリカの航空宇宙局( NASA )はグレン中佐のフレンドシップ七号の宇宙旅行に際して、カメラを用意していなかったが、中佐はぜひもっていきたいと思った。 打ち上げの数ヶ月前、彼らは発射場pのケープカナベルの近くにあるドラッグストアに行った。そして、数台のカメラを買ってきたが、その中にアンスコオートセットがあった。………
………  グレン中佐は家族とともに住む兵舎のような木造の家に戻ると、ベッドの上に数台のカメラを並べた。それぞれの特徴を比べてみたうえで、彼は最終的にハイマチックを選んだ。………

その情景までが思い浮かぶ描写によって紹介されているこのエピソードは、同著で〝  四半世紀に及ぶ夫妻との友情  〟と表現する交流があったという「  ジョン・グレン  」氏のものとして著者が記しているもので、このエピソードを〝 そうではなかった 〟と否定する理由もありません。
当サイトでは、著者が書籍の中で語る回想やエピソードは当時の様子を伝える証言として貴重な記録となっていると考え、同著とそこに記されたエピソードのいくつかを紹介いたしました。


1961年、遅くとも
クリスマスシーズンを迎える12月までの間に発売された〈  Ansco AUTOSET  〉が、「  ジョン・グレン  」中佐の
搭乗する『  Friendship 7 』の宇宙ミッションで使用されたのは、年をまたいだ1962年2月の事です。
その〝 偉業 〟が伝えられた後の3月に、〈  minolta HI-MATIC  〉は日本国内で発売となります。

製品に付属する取り扱い説明書の冒頭には、アメリカで成し遂げられた偉業に同製品が採用された実績を紹介する次の記述があります。

……… 去る2月20日宇宙旅行に成功したフレンドシップ7号で各国の一流製品をおさえて宇宙撮影に選ばれ青空の天界を鮮明に捕えてきました。……

minolta HI MATIC Box製品は『  FULLY AUTOMATIC EXPOSURE CONTROL  と記された箱に納められ、取り扱い説明書の見開きにはレタリングされた『 EE 』の文字が大きくレイアウトされています。冒頭の紹介文は〝 完全EE (自動露光) 機構 〟の先進性と信頼性とを『  Friendship7 』での実績によってアピールする内容になっています。


《  千代田光学精工
株式会社  》はその後、アメリカの宇宙ミッションに自社の製品が採用された事を積極的にアピールした商品展開を行なっています。
同社が《  ミノルタカメラ
株式会社  》へと商号を変更したのは1962年の月で、その正式な登記は31日となっていますが、その直前となる16日に発売された〈  SR-7  〉の広告には次の文言があります。

………『  米国最初の宇宙船フレンドシップ7に採用されて宇宙開発に貢献したミノルタカメラの栄光を永久に記念するため本機をフレンドシップに因んでSRー7と名づけました。』……


〈  SR-7  〉
は、同社がシステムカメラとしてシリーズ展開していた一眼レフカメラの新製品として登場しました。
シリーズのモデルは〈  SR-2  〉から始まり、廉価モデルの〈  SR-1  〉後継モデル〈  SR-3  〉と、それぞれの改良型が展開されていました。
〈  SR-2  〉は、《  千代田光学精工 株式会社  》が 35㎜判のレンズ交換式フォーカルプレーンスチルカメラの研究開発を〝 レンジファインダー機 〟から〝 一眼レフ機 〟へとシフトして製造した製品です。
同シリーズの新機種として登場した
〈  SR-7  〉は、シャッター速度の設定と連動する露出計を新たに搭載し、その受光素子にはカメラとして初めて「  Cds  」が用いられました。
「  Cds  」が採用された事で、それまでの製品で用いられていた「  セレン光電池  」よりも受光部の面積を大幅に小さくする事が出来たほか、測定精度と暗所での測光性能の向上とを実現していました。


〈  Ansco AUTOSET  〉/〈  minolta HI-MATIC  〉の搭載シャッター「  CITIZEN UNI E  」を製造した《  シチズン時計 株式会社  》の広告にも『  Friendship 7 』の偉業と関連した宣伝を見る事が出来ます。
こには、〈  minolta HI-MATIC  〉を  宇宙カメラ  と表現した次のようなキャッチコピーがあります。

『  ユニ・Eは 宇宙カメラ〈  ミノルタ・ハイマチック  〉についています  』

当時、世界がアメリカとソビエト連邦との「 宇宙開発競争:Space Race 」の行方を見守るなか、その宇宙船で使用された事はカメラを製造した《  千代田光学精工 株式会社  》だけにとどまらず、その協力企業をも含めた内外にまで及ぶ大きな出来事であった事が窺えます。

 

 Ansco AUTOSET  〉 の〝 偉業 〟によって確立された〈  minolta HI-MATIC  〉の成功は、《  千代田光学精工 株式会社  》が社名を変更する契機となり、また〈  SR-3  〉の後継機種の型式番号には[ ][ ][ ]ではない『  Friendship 7  』の  が冠されて、同社が注力していた〝  SR  〟シリーズの新機種を〈  SR-7  〉として登場させました。

これ以降〝 〟という型式番号が同社の製品に付与される場合、それは単なる通し番号以上の意味をもつものとなっています。
そして、ここに紹介している  minolta HI-MATIC  がモデルチェンジして、その後継機種として1963年に発売された製品は、他でもないが冠された〈  minolta HI-MATIC 7  となって登場しています。

minolta Hi-MATIC 7〈  minolta HI-MATIC 7  〉


製品のBOXには

「  35㎜ CAMERA WITH AUTO & MANUAL CONTROL  」
と記され、
AUTO と併せて〝 MANUAL 〟設定を可能にした機能がアピールされています。

 

〈  minolta HI-MATIC 7  
については

の項で紹介しています。

HI-MATIC 7〈  minolta HI-MATIC 7  〉
1963発売

 

  minolta HI-MATIC    Ansco AUTOSET  

ちがい

《  GAF Corporation  》が販売した〈  Ansco AUTOSET  〉は、製造元の《  千代田光学精工 株式会社  》の〈  minolta HI-MATIC  〉を単純に名称変更したOEM 製品ではなく、両機種には仕様とデザインに違いが見られます。

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC
– 画像左 –
〈  
Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  
minolta HI-MATIC  〉

 

〈  minolta HI-MATIC  〈  Ansco AUTOSET  の違いを決定付けているのが搭載する撮影レンズです。

搭載する撮影レンズの焦点距離は両機種ともに同じ45㎜ですがその口径比は異なっています。
〈  minolta HI-MATIC  〉には[ f2.0 ]、〈  Ansco AUTOSET  〉には[ f2.8 ]のものが搭載されています。
鏡筒正面の化粧リングにはそれぞれのレンズ銘が彫り込まれていて、minolta HI-MATIC 〉「  MINOLTA   ROKKOR – PF   1 : 2   f = 45㎜  」で、一方の〈  Ansco AUTOSET  〉ANSCO   ROKKOR   f / 2.8  45㎜  」となっています。

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC
– 画像左 –

 ANSCO  ROKKOR  f / 2.8  45㎜  」搭載

〈  Ansco AUTOSET  〉

– 画像右 –

 MINOLTA ROKKOR – PF  1:2  f = 45㎜  」搭載

〈  minolta HI-MATIC  〉 


〈  Ansco AUTOSET  〉の
「  ANSCO  ROKKOR   f / 2.8  45㎜  」 は、1960年に発売された〈  ANSCOSET  〉に搭載されたものを引き継いだスペックになっています。
〈  ANSCOSET  〉は、《  千代田光学精工 株式会社  》の製品である〈  minolta Uniomat  〉のモデル名を変えて《  GAF Corporation  》の商品として製造された OEM 製品で、両製品の仕様は全く同一のものです。
その〈  minolta Uniomat  〉の撮影レンズとして化粧リングに記されている「  MINOLTA  ROKKOR  1 : 2.8 / 45  」の『  MINOLTA  』を『  ANSCO  』に変更して表示を改めたレンズ銘が「  ANSCO  ROKKOR  f / 2.8  45㎜  」で、これが〈  Ansco AUTOSET  〉に引き継がれて搭載されています。

〈  minolta Uniomat  〉の  MINOLTA  ROKKOR  1 : 2.8 / 45  は、《  千代田光学精工 株式会社  》が1959年に発売した〈  minolta A3  〉の「  MINOLTA  ROKKOR – TD  1:2.8  45㎜  」と同じ撮影レンズです。
《  千代田光学精工 株式会社  》は、レンズ構成の群数と枚数とを識別する記号として、アルファベット2文字をレンズ銘に表記して用いていました。
2文字を、頭文字でラテン語の数量詞とアルファベット順を順序数として数えて読んで、、それぞれを[群数 ]と[ 枚数 ]として表示するようになっています。
[    ]と[    ]はそれぞれ[  ri=   ]と[  ABC = 123 ]を表す記号となり、「  ROKKOR  TD  1:2.8  45㎜  」のレンズ構成が3群4枚である事を示しています。

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minolta A3_minolta Uniomat

– 画像左 –

〈  minolta A3  〉

1959年発売

– 画像右 –

〈  minolta Uniomat 

1960年発売

 

〈  minolta A3  〉が〝 直進ヘリコイド方式 〟による「  全群繰出式  」の焦点合わせを行うのに対して、〈  minolta Uniomat  〉はフォーカスリングの操作と共に前玉が回転しながら繰り出される〝 前玉回転方式 〟の「  前玉繰出式  」になっています。
さらに、撮影設定の操作方法が大きく異なる〈  minolta A3  〉と〈  minolta Uniomat  〉では、この他にも鏡筒部分の構造に違いがあります。
〝 シャッター速度リング 〟と〝 絞りリング 〟によるマニュアル操作での撮影設定を行う〈  minolta A3  〉は、光学系の中にシャッター羽根と絞り羽根とを備えた、レンズシャッター機としてのスタンダードといえる構造をもっています。
これに対して、『  OPTIPER UNI CITIZEN  』シャッターが実現した「  ユニシステム  」による〝  EVリング  〟の操作だけで撮影設定を行う〈  minolta Uniomat  〉には絞り羽根が無く、 シャッター羽根の開閉が調節される事で絞り効果を得る仕組みになっています。

定かな事は判りませんが、焦点合わせの方式に違いがある事で両機種の撮影レンズが別のものとして扱われて、〈  minolta Uniomat  〉には[ TD ]という表記がなされなかった という事が考えられます。

〈  minolta Uniomat  〉の「  ユニシステム  」を『 EE(イーイー)Electric Eye(エレクトリック アイ) 』機構と連動させた『  CITIZEN UNI E  』シャッターを搭載する〈  minolta HI-MATIC  〉にも絞り羽根がありませんが、撮影レンズの表記にはアルファベット2文字によるレンズ構成表示があります。
〈  minolta HI-MATIC  〉は〝 直進ヘリコイド方式 〟による「  全群繰出式  」の焦点合わせを行う製品で、焦点合わせの方式に〝 前玉回転方式 〟の「  前玉繰出式  」が採用されている〈  minolta Uniomat  〉とはこの点で異なっています。
両機種に見られるこの違いは、〈  minolta Uniomat  〉にレンズ構成の表記がされていない理由が「  前玉繰出式  」による
焦点合わせの方法にある事を示唆しています。
また、後のほぼ同時期に発売された〝 前玉回転方式 〟の「  前玉繰出式  」による焦点合わせを行うレンズシャッター機にもアルファベット2文字のレンズ構成表記が無く、この事をさらに裏付けているといえます。

minolta repo_minoltina P

– 画像左 –

 minolta repo  〉

1963年発売

「  MINOLTA  ROKKOR  1 : 2.8 / 30  」搭載

– 画像右 –

〈  minoltina P  〉

1964年発売

「  MINOLTA  ROKKOR  1 : 2.8  f = 38㎜  」搭載

  •  minolta repo  〉〈  minoltina P  〉両機種のレンズ銘の表示には、アルファベット2文字による構成表記だけでなく、製造番号の表記もなされていません。

ここまで、搭載する撮影レンズの口径比が異なる〈  minolta HI-MATIC  〉と〈  Ansco AUTOSET  〉を、そのレンズ銘とスペック表記の違いから比較してきました。
レンズ銘にはそれぞれの製品ブランドが表示された上で
、《  千代田光学精工 株式会社  》のレンズブランドの『  ROKKOR  』に続けて焦点距離と口径比が記されていました。
さらに、同時期の『  ROKKOR  』 ブランドのレンズには、レンズ構成を示すアルファベット表記がされているものがあり、その有無が焦点合わせの方法の違いで区別されている事をみてきました。

〈  minolta HI-MATIC  〉には、1958年に《  千代田光学精工 株式会社  》が発売した〈  minolta V2  〉に搭載されて以降、同社のレンズシャッター機が装備する大口径タイプのレンズとして〈  minolta A5  〉,〈  minolta AL  〉、そして〈  minolta HI-MATIC  〉へと順次採用されていった撮影レンズが搭載されています。
その「  MINOLTA   ROKKOR – PF   1 : 2   f = 45㎜  」は、
レンズ構成表記のアルファベット[    ]と[  F  ]の2文字がそれぞれ[ enta = 5  ]と[  ABCDEF = 12345 6  ]を表して、枚構成である事が示されている撮影レンズです。

 

一方の〈  Ansco AUTOSET  〉には、発売元の《  GAF Corporation  》が前年に発売した〈  ANSCOSET  〉と同じ撮影レンズが搭載されており、そのレンズ銘の表記が引き継がれて鏡筒の化粧リングに記されています。
その表記は「  ANSCO  ROKKOR   f / 2.8  45㎜  」となっています。
〈  ANSCOSET  〉は、〈  Ansco AUTOSET  〉と同様に《  千代田光学精工 株式会社  》が OEM により製造した製品でした。
その仕様は、ベースとなっている〈  minolta Uniomat  〉とデザインを含めた全てが同じで、搭載する撮影レンズも化粧リングの銘こそ『  ANSCO  』となっていますが「  MINOLTA  ROKKOR  1 : 2.8 / 45  」と同一のものです。

同時期に発売された《  千代田光学精工 株式会社  》の製品を比較していくと、アルファベット2文字のレンズ構成表記がある機種が〝 直進ヘリコイド式 〟のフォーカスリングを備えた「 全群繰出式 」であるのに対して、レンズ構成表記の無い機種では〝 前玉回転方式 〟による「  前玉繰出式  」が焦点合わせの方式として採用されていました。
『  ANSCO  』銘になった「  MINOLTA  ROKKOR  1 : 2.8 / 45  」を、〈  minolta Uniomat  〉の OEM 製品である〈  ANSCOSET  〉から引き継いだ〈  Ansco AUTOSET  〉のレンズ表記は「  ANSCO  ROKKOR   f / 2.8  45㎜  」となっています。
の仕様を、OEM製品としてのベースとなっている〈  minolta HI-MATIC  〉と比較したとき、「  全群繰出式  」である〈  Ansco AUTOSET  〉は、搭載レンズを「  MINOLTA  ROKKOR  TD  1:2.8  45㎜  」に換装した〈  minolta HI-MATIC  〉だといえます。

《  千代田光学精工 株式会社  》の一眼レフカメラSRシリーズ用の交換レンズにもアルファベット2文字のレンズ構成表記のある撮影レンズがあり、「  ROKKOR – TD  1:2.8  45㎜   」もそのひとつにラインナップされています。

口径比が違う撮影レンズを搭載する〈  minolta HI-MATIC  〉と〈  Ansco AUTOSET  〉では前玉の大きさが異なり、その差が外観の印象を大きく変えています。
このような仕様の違いによるものではなく、デザインされた部分の最も大きな違いとなっているのが軍艦部の〝  フロントマスク  〟です。

 minolta Hi MATIC _ Ansco AUTOSET
– 画像左 –
〈  Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉 

 

〈  minolta HI-MATIC  〉/〈  Ansco AUTOSET  〉の軍艦部分は、露出計の受光窓とファインダー窓が並ぶ正面の〝  フロントマスク  〟と、正面以外の部分をヘルメットのように覆うトップカバーとで構成されています。
独立した部品として本体に直接取り付けられている〝  フロントマスク  〟には本体側に被さるプレート状の装飾部分があります。

minolta Hi-MATIC〈  minolta HI-MATIC  〉
軍艦部の〝 フロントマスク 〟の装飾部分は正面の左手側のみ
Ansco AUTOSET〈  Ansco AUTOSET  〉
軍艦部の〝  フロントマスク  〟の装飾部分は正面の全体

 

〈  minolta HI-MATIC  〉の装飾部分は、本体を正面から見て鏡筒の左手側にだけあり、そこにブランド銘である『  minolta  』と記されたアルミニウム製の化粧板が取り付けられています。
〈  Ansco AUTOSET  〉ではこの装飾部分が右手側から左手側までの正面全体にあり、そこに水平のラインが装飾としてあしらわれていて、右手側の端に『 Ansco  』がブランド銘として記されています。

 

「 シャッターボタン 」の違い

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC

– 画像左 –
〈  Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉 

〈  minolta HI-MATIC  〉/〈  Ansco AUTOSET  〉の「 シャッター ボタン 」はカメラ本体正面の右手側にあります。
その形状は「 ボタン 」というよりも「 レバー 」と呼ぶ方が適当で、押し込むというよりは下方向にスライドさせるようにしてレリーズします。
このスタイルからは、上下の動きが判りやすい形状のシャッターボタンにする事によって、『  AUTOMATIC  』撮影のレリーズ方法を分かりやすく伝えようとした意図が感じられます。

その『  AUTOMATIC  』撮影でのレリーズは、はじめにファインダー内のメーター針でフレーム内の被写体が『  AUTOMATIC  』撮影が行える条件下にある事を確認して行います。
メーターが連動範囲内に振れている状態でシャッターボタンを半分ほど押し込むと、メーター針の振れが固定されて「 撮影設定が内蔵露出計と自動的に連動する機能 」が正しく作動する状態となります。
そのまま最後までシャッターボタンを押し下げると、「  CITIZEN UNI E  」シャッターが実現しているプログラム式の撮影設定によりレリーズされます。

両機種には異なる形状の「 シャッターボタン 」が付いていて、外見上の違いの一つとなっています。


〈  minolta HI-MATIC  〉
 Ansco AUTOSET  のシャッターボタンは、横から見るとそれぞれが「 楔(くさび)型 とも (かぎ)型 とも呼べるような形で、両機種ではそれぞれのシャッターボタンを上下逆さまに取り付けたような形状の違いがあります。

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC

– 画像左 –
〈  Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉 

発売時期は OEM 製品の〈  Ansco AUTOSET  〉が先行していますが、ベースとなった〈  minolta HI-MATIC  〉はそれよりも前に製品発表されていて、《  GAF Corporation  》向けの仕様変更が両機種の違いとなっているといえます。
推測となりますが、当時の日本人と比較して手や指の大きなアメリカ人の使用を想定して、内蔵露出計の受光窓に人差し指が干渉するのを防ぐため、〈  minolta HI-MATIC  〉のシャッターボタンよりも指を乗せる位置を下げる事を意図して、〈  Ansco AUTOSET  〉のシャッターボタンの形状へと仕様を変更したのだと考えられます。
両機種のシャッターボタンの形状に見られる違いは、どちらかがどちらかの改良型だという事ではないようです。

〈  minolta HI-MATIC  〉/〈  Ansco AUTOSET  〉にはケーブルレリーズを取り付ける事ができます

  • トップカバー上面のフラットな部分にネジ穴が設けられていて、ケーブルレリーズを直接ねじ込んで取り付けます。
  • ネジ穴はオーソドックスなスタイルのカメラではシャッターボタンがあっていいような位置にあります

 

minolta Hi MATIC_minolta autowide
– 画像左 –
〈  minolta HI-MATIC  〉
– 画像右 –
〈  minolta autowide  〉 

  • 《  千代田光学精工 株式会社  》が19581962年にそれぞれ発売した〈  minolta autowide  〉と〈  minolta HI-MATIC  〉には、同じようなスタイルのケーブルレリーズ取り付け穴が設けられています。

このサイトで紹介している〈  minolta autowide  〉は、世界初の「 内蔵露出計連動カメラ 」として1958年に登場した製品です。
その発売は月で、1962年の月に発売された〈  minolta HI-MATIC  〉のちょうど4年前となります。
〈  minolta autowide  〉によって「  内蔵露出計連動カメラ  」を実現させた《  千代田光学精工 株式会社  》は、4年の歳月を経て「  完全自動露出カメラ  」という機能に発展した〈  minolta HI-MATIC  〉を登場させました。

 

「  フィルム感度設定ダイヤル  」の違い

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC
– 画像左 –
〈  Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉 

〈  minolta HI-MATIC  〉/〈  Ansco AUTOSET  〉の背面には、「  フィルム感度設定ダイヤル  」が軍艦部のほぼ中央に設けられています。

  • ダイヤルは外周のリング状になった部分だけが動くようになっていて、リングを引き出して操作します。
  • 外周のリングを上下に分けるようにして刻まれた二つの指標を、ダイヤルの内側にドーナツ状に並んだインデックスに合わせる事でフィルム感度の設定を行うことが出来ます。

 

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC
– 画像左 –
 Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉 

「  フィルム感度設定ダイヤル  」では、ASA 1600DIN 33 )までの 25 段階のフィルム感度を設定する事ができます。
〈  minolta HI-MATIC  〉と〈  Ansco AUTOSET  〉とでは、その目盛りとしてダイヤルの内側に記されているインデックス表示のスタイルに違いがあります。

  • 〈  minolta HI-MATIC  〉には ASADIN 両方の規格による感度表示が、ダイヤルの円を分割した左右にそれぞれ記されています。
  • 一方、アメリカ市場向けに製造されている〈  Ansco AUTOSET  〉には、アメリカの標準規格である ASA の感度表示のみが記されています。

ASADIN 両方の規格で感度表示をしている〈  minolta HI-MATIC  〉では、それぞれの表示スペースが狭くなっているために全ての数値は表記されていません。
表記されている  段階の数値の間には  段分の設定値があり、それぞれに「  フィルム感度設定ダイヤル  」のストップポジションが入っていて、表記がある設定値と同様の設定を行う事が出来ます。
ASA 12 の下と 25 の上にある  は、それぞれ  ASA 10  と  32 のポジションにあたり、当時一般的だったフィルム製品の感度指数をマークして表示したものです。

ASA 規格の感度表示のみが記された〈  Ansco AUTOSET  〉には、〈  minolta HI-MATIC  〉では DIN 規格の表示をしていた左側の半円に、右側の感度指数の間の値が記されています。
左側には7段階の表示があり、右側の  段階と合わせて16 段分の感度指数が表記されています。
更にその間にもストップポジションが設けられていて、全部で25段階の設定を行う事ができます。
表示のない設定値は、ASA      16    20    40    64   125  250  500  1000  の  段分となります。

 

製品マニュアルには、「  フィルム感度調節リング( フィルム感度設定ダイヤル ) 」のもう一つの機能として、逆光撮影での露出補正を行うための使用方法が紹介されています。

 

鏡筒の指標による表示機能の違い

スペックの異なる撮影レンズを搭載している事を別とすれば、カメラの機能そのものには違いが無い〈  minolta HI-MATIC  〉と〈  Ansco AUTOSET  〉ですが、『  AUTOMATICオートマチック  』を解除して行うフラッシュ撮影の設定に用いる指標の表記にはスタイルの違いがあります。
そのスタイルの違いが、設定操作を行う上での機能的な違いにもなっています。

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC

– 画像左 –
〈  Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉


『  AUTOMATIC : オートマチック
を解除するには、「  EE機構作動リング  」を操作して 
           マークを鏡筒の      ▲      マークから外します。

〈  minolta HI-MATIC  〉/〈  Ansco AUTOSET  〉両機種とも「  EE機構作動リング  」の      ▼      マークが『  AUTOMATIC  』で、すぐ横に小さく赤い文字で   AUTO   の表記がしてあります。
その隣りに、  B  マークの『  BULBバルブ( シャッター開放 )』が表記されています。
  B   マークにつづく表記が両機種で異なっていて、指標の確認と設定方法に違いがあります。

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC

– 画像左 –
〈  Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉

  • 画像右:〈  minolta HI-MATIC  〉は   B   マークに続けて絞りの『 が表記されています。
  • 画像左:〈  Ansco AUTOSET  〉の   B   マークの続きには設定の操作範囲を示す[ ]のなかに『 フラッシュ 』を表す   ⚡︎   マークが記されています。

 

〈  minolta HI-MATIC  〉の「  EE機構作動リング  」には、鏡筒を上から見たときの正面に            マークが記されています。
その隣りには  B  マークがあり、続いてリングの操作方向となる右手側に向かって  2  .8  4  .6  11 16 の順に、絞りの『 』が並んでいます。

minolta Hi MATIC〈  minolta HI-MATIC  〉
鏡筒の「 EE機構作動リング 」には絞り値の表示が並びます

 

「  EE機構作動リング  」を            から外すと、  B  の他ではシャッター速度が 1/30(s) に固定されます。
この状態では「  EE機構作動リング  」が〝  絞りリング  〟として機能して に限ってマニュアル設定が行えるようになります。
フラッシュを用いる場合には、この機構を利用したマニュアル操作による撮影設定を行います。

マニュアルで設定する〝 絞り 〟の は、使用するフラッシュの『  GNガイドナンバー  』と被写体までの距離から撮影者が計算して求める事になります。
計算に用いる被写体までの距離は、鏡筒基部の側面に記された距離表示をフォーカスリングに記された    ●    マークの指標で読みます。
鏡筒基部の距離表示は左右にあり、左手側が[ mメートル で右手側が ftフィート 表記になっています。

minolta Hi MATIC〈  minolta HI-MATIC  〉
鏡筒側面の左手側
基部にある距離表示の単位は
メートル

minolta Hi MATIC〈  minolta HI-MATIC  〉
鏡筒の右手側
距離表示の単位は
ftフィート

 

〈  Ansco AUTOSET  〉の「  EE機構作動リング  」には、鏡筒を上から見たときの正面に            マークが記されて、その隣りに  B  マークがあるレイアウトは〈  minolta HI-MATIC  〉と同じです。
 B  マークに続いてリングの操作方向に記されているのは絞りの ではなく、フラッシュを表す   ⚡︎   マークが操作範囲を示す[ ]と合わせて記されています。
〈  minolta HI-MATIC  〉とは異なり、設定値の表示がありません。

Ansco AUTOSET  Ansco AUOSET  
鏡筒の「 EE機構作動リング 」には『 フラッシュ 』マークが記されています

 

機構そのものは〈  minolta HI-MATIC  〉と変わりはなく、「  EE機構作動リング  」を            から外すと、  B  の他ではシャッター速度が[ 1/30(s) ]に固定されます。
この状態のとき「  EE機構作動リング  」を〝  絞りリング  〟として操作する事が出来るのも〈  minolta HI-MATIC  〉と同様です。
〈  minolta HI-MATIC  〉では、フォーカスリングの指標で確認した被写体までの距離と、使用するフラッシュの『  GNガイドナンバー  』とを用いて、フラッシュ撮影で設定するを撮影者が計算して求める必要がありますが、〈  Ansco AUTOSET  〉では鏡筒に設定用の指標を設ける事でこの計算を必要としません。

Ansco AUTOSET  Ansco AUTOSET  〉
鏡筒側面の右手側

 

  • 「  EE機構作動リング  」に並ぶ数値はフラッシュの『  GNガイドナンバー ( 値は ft:フィート用 )
  • 「  フォーカスリング  」には、『 GN 』の指標となる    ●    マークが記されています
  • 「  EE機構作動リング  」と「  フォーカスリング  」の間にある鏡筒の黒色部分には、『 GN 』と    ●    マークを結んで読むための〝  ガイドライン  〟が引かれています
  • 鏡筒の基部には距離表示がありません

 

このインデックスを用いるフラッシュ撮影の撮影設定では、使用するフラッシュの『  GNガイドナンバー 』はシャッター速度が[ 1/30(s) ]のときのftフィートでの数値を用います。

設定では、はじめに「  フォーカスリング  」で被写体にピントを合わせます。
「  フォーカスリング  」の    ●    マークが〝  ガイドライン  〟で指示するように、「  EE機構作動リング  」に記された『  GNガイドナンバー  』を、使用するフラッシュのものに合わせれば設定は完了です。
被写体までの距離に対して『 GN 』が小さくて( または大きくて)設定が出来ない場合には、設定可能な距離まで近づくか( 離れるか )、『 GN 』の大きな( 小さな )〝 フラッシュバルブ 〟もしくは〝 エレクトロフラッシュ スピードライト/ストロボ 〟に換えて設定を行う事になります。

このように、〈  Ansco AUTOSET  〉はフラッシュの『 GN 』を設定するインデックスを鏡筒に備える事で、フラッシュ撮影での設定に必要な『 』を撮影者が計算で求める必要のない直感的な設定操作が行えるようになっています。

 

〈  Ansco AUTOSET  の鏡筒には、左手側にもインデックスがあります。
こちらは、絞りを任意の に設定して撮影を行う場合に用いるもので、そのスタイルは〈  minolta HI-MATIC  〉が鏡筒側面の正面上から見たときのに備えているものと同じです。

Ansco AUTOSET〈  Ansco AUTOSET  〉
鏡筒側面の左手側

 

  • 鏡筒側面の左手側にも、正面( 上から見たときの )と同じ        マークが記されていて、「  EE機構作動リング  」に記された設定の表記の指標となります。
  • 「  EE機構作動リング  」には、『  AUTOMATIC  』設定の   AUTO     マークとその隣りに  B  マークがあり、続けて表記されているのは正面とは異なり絞りの『 f値 』が並びます。
    この表示は〈  minolta HI-MATIC  〉と同じです。
  • 鏡筒基部には ft:フィート で記された距離表示があり、「  フォーカスリング  」にこれを指示する    ●    マークが記されています。

 

 Ansco AUTOSET  に記されている設定表示は、その規格や単位にアメリカ国内で用いられているものだけが記されています。
距離の表記に ft:フィート だけが用いられている事は、「  EE機構作動リング  」にフラッシュの『  GNガイドナンバー  』を記して、フラッシュ撮影用のインデックス表示を可能にした事と無関係ではないかも知れません。
また、これよりも先に紹介した「  フィルム感度設定ダイヤル  」では、そのスペース全体に ASA 規格の感度が表記され、設定可能な全てではないものの ASADIN 両方を表示する〈  minolta HI-MATIC  〉よりも、多くの設定値を表示しています。

ASA ( American Standards Association : アメリカ標準協会 ) 規格
製品が発売された当時のアメリカの国内工業規格

1918年に AESC ( American Engineering Standards Committee : アメリカ工業規格委員会) として設立され、1928年に ASA へと改名した標準化組織による規格。
1966年に USASI ( United States of America Standards Institute : アメリカ合衆国規格協会 ) へと発展して、1969年に ANSI ( American National Standards Institute : アメリカ国家規格協会 ) に改名しています。

DIN ( Deutsche Industrie Normen : ドイツ工業規格 ) 規格
製品が発売された当時のドイツの国内工業規格

1917年に NADI ( Normenasschu der deutschen Industrie : ドイツ工業規格委員会 ) として設立され、1926年に DNA ( Deutscher Normenausschuss : ドイツ標準化委員会) へと発展した標準化組織による規格。
1975年にドイツの国家標準化機関となって規格名と同じ略称の DIN ( Deutsches Institut für Normung e.V. : ドイツ規格協会 ) へ改名しています。

ISOInternational Organization for Standardization : 国際標準化機構 )は1947年に発足していましたが、製品が発売された当時はフィルム感度の ISO 規格がなく、感度表記は ASADIN 規格で表示されたフィルムが市販されていました。

1982年に ISO 規格が策定されて 《  ISO 100 / 21° 》 のように、それまでにあった両方の規格を併記する形で統一されています。   

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Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC

– 画像左 –
〈  Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉 

鏡筒側面の正面から操作方向に並ぶ「  EE機構作動リング  」の表示
設定表示のスタイルが異なっています

 

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC

– 画像左 –
〈  Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉 

鏡筒側面の右手側のインデックス
フラッシュ撮影用の『 GN:ガイドナンバー 』表記の有無は両機種の大きな違いの一つ

 

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC

– 画像左 –
 Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉 

鏡筒側面の左手側のインデックス
両機種では「  EE機構作動リング  」の設定表示の有無が違いとなっています

 

  • 〈  minolta HI-MATIC  〉は、鏡筒側面の正面( 上から見たときの )にあたる位置だけに「  EE機構作動リング  」の設定表示があり、設定状態を「  AUTO  」「  BULB  」と絞りの「 値 」で表示します。
  • 〈  minolta HI-MATIC  〉の距離表示は鏡筒基部の左右にあり、左手側がメートルで右手側がftフィート 表記になっています
  • 〈  Ansco AUTOSET  〉の「  EE機構作動リング  」の正面には、設定状態を表す〝 マーク 〟のみが記され、絞りの「  」を表記せずに    ⚡︎    ( フラッシュマーク )が記されています

    鏡筒側面の右手側が〝  フラッシュ撮影用のインデックス 〟になっていて、「  EE機構作動リング  」にフラッシュの『  GN:ガイドナンバー  』が並ぶ表示があります。
    左手側は〝  マニュアル設定用のインデックス  〟になっていて、「  EE機構作動リング  」の表記は「  AUTO  」「  BULB  」と絞りの「 」が並ぶ〈  minolta HI-MATIC  〉と同様のスタイルの表示が記されています。
  • 〈  Ansco AUTOSET  〉には、 ftフィート 表記の距離表示が鏡筒基部の左手側にだけあります。

 

 

メーカー刻印の有無

〈  Ansco AUTOSET  〉が発売された1961年、そして〈  minolta HI-MATIC  〉が発売された1962月の時点では、『  minolta : ミノルタ  』は《  千代田光学精工 株式会社  》にとっての『  商標  』であり、両機種の発売は同社が社名を《  ミノルタカメラ 株式会社  》に変更する以前となります
同社の社名変更は〈  Ansco AUTOSET  〉/〈  minolta HI-MATIC  〉の〝 成功 〟が契機となったというエピソードはこの項ですでに紹介しましたが、変更が行われたのは日本国内で〈  minolta HI-MATIC  〉が発売された同年1962年の月の事です。

社名を《  ミノルタカメラ 株式会社  》に変更した後の製品には、商品名のほかに『  MINOLTA CAMERA CO.,LTD.  』というメーカー刻印が記されるようになります。
それ以前の製品には、『  CHIYODA KOGAKU  』もしくは『  CHIYODA KOGAKU OSAKA JAPAN  』という刻印が記されています。

〈  Ansco AUTOSET  〉にはボトムカバーの中央に『  CHIYODA KOGAKU  』の刻印がありますが、画像の〈  minolta HI-MATIC  〉にはこれがありません。
また、両機種ともにスプロケットギアを解放する「  巻き戻しボタン  」の右手側となりの同じ位置に『  JAPAN  』の刻印があります。

Ansco AUTOSET _ minolta Hi MATIC
– 画像左 –
〈  Ansco AUTOSET  〉
– 画像右 –
〈  minolta HI-MATIC  〉 

 

  • 画像で紹介している製品の比較では、『  CHIYODA KOGAKU  』の刻印は〈  Ansco AUTOSET  〉にだけ記されています。
  • 画像の〈  minolta HI-MATIC  〉には、製品のどこにも『  CHIYODA KOGAKU  』というメーカー表記がありませんが、軍艦部の〝 フロントマスク 〟にある装飾プレートの『  minolta  』と、鏡筒正面の化粧リングに記された『  MINOLTA  』が、《  千代田光学精工 株式会社  》の商標として記されています。

 

《  千代田光学精工 株式会社  》が製造した製品に刻印されていた『  CHIYODA KOGAKUCHIYODA KOGAKU OSAKA JAPAN  』という表記は、同社が商号( 社名 )を《  ミノルタカメラ 株式会社  》に変更した後には『  MINOLTA CAMERA CO.,LTD.  』へと改められています。
しかし、商号変更が行われて間もない頃の製品には、そのどちらの刻印も記されていないものが多くあります。
商号変更後のメーカー表記のスタイルが決まるまでの期間を、表示そのものをしない事で対応したものだと考えられます。
また、発売と製造、販売期間が商号変更のタイミングと重なっている製品のなかには、『  CHIYODA KOGAKUCHIYODA KOGAKU OSAKA JAPAN  』表記の製品『  MINOLTA CAMERA CO.,LTD.  』表記の製品、さらにはそのどちらの表記もされていない製品とが製造されているものがあります。
さらには、製品とその箱や取り扱い説明書などに記さたメーカー名の新旧とが、それぞれ一致していないパッケージもあったようです。
この項で紹介している画像の製品も、箱と保証書と取扱説明書の表記とが一致していないパッケージとなっています。
この項で紹介した「  楠本 定平  」氏の著書にあるエピソードが伝えているように、創業者で社長の「  田嶋  一雄  」氏による商号変更の決定と実行の判断とが、非常に速やかに行われた当時の様子が、このメーカー刻印の表記に見られる違いからも窺い知る事が出来ます。

 

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