1961年7月に、当時の 《 千代田光学精工 株式会社 》 から発売された 〈 minolta AL 〉 は、1960年に同社が発売した 〈 minolta A5 〉 に露出計を搭載して発展させた製品です。
1961年発売 〈 minolta AL 〉
〈 minolta AL 〉 は 〈 minolta A5 〉 と共通の筐体を持ち、ファインダー ,撮影レンズ ,シャッターの各スペックを継承しつつ、新たに内蔵した露出計に撮影設定を連動させる事が可能になっています。
内蔵露出計への連動方法は 『 定点合致式 』 と呼ばれる方式が採用されています。
機能面では大きな変更があった〈 minolta A5 〉から〈 minolta AL 〉へのアップグレードでは、魚眼レンズが並んだ露出計の受光窓がファインダー窓の右手側に新たに設けられた他は、連動露出計を搭載していながらも外観に大きな違いがありません。
スポンサーリンク
– 画像左 –
〈 minolta A5 〉– 画像右 –
〈 minolta AL 〉
〈 minolta A5 〉
〈 minolta AL 〉
- 〈 minolta A5 〉 をベースとして露出計を搭載した 〈 minolta AL 〉 は、『 定点合致式 』 による内蔵露出計との完全連動を実現しています。
- 〈 minolta A3 〉 、そして 〈 minolta A5 〉 にはトップカバー正面の右手側に〝 M 〟のシンボルマークのレリーフがありますが、〈 minolta AL 〉 では内蔵露出計の受光窓が設けられ、セレン光電池を受光素子に用いる製品が特徴とする集光用の魚眼レンズが並んでいます。
定点合致式では内蔵した露出計に測定情報を表示させる必要がないため、表示窓は指針だけが覗く小さなものがトップカバー上に設けられています。
表示窓が設けられた事により、アクセサリーシューの位置が左手側に移動しています。
– 画像左 –
〈 minolta A5 〉– 画像右 –
〈 minolta AL 〉
〈 minolta A5 〉
〈 minolta AL 〉
- 〈 minolta A5 〉 にはムキだしのホイールが回転する方式のフィルムカウンターがトップカバー上部にありますが、露出計を搭載した 〈 minolta AL 〉 ではフィルムカウンターの配置がカメラ底部に移されています。
- 〈 minolta AL 〉 のカメラ底部にあるフィルムカウンターは、三脚穴と対称となる位置とスタイルになっていて、巻き戻しボタンの隣りの右手側にあります。
露出計の搭載により、トップカバー上に配置されていたフィルムカウンターが底面に移っていますが、〈 minolta A3 〉 , 〈 minolta A5 〉 と同様にフラットでスッキリとした外観が保たれています。
〈 minolta A5 〉は、同社が 1955年より製造していた 〈 Minolta ・A・ 〉 系統のレンジファインダー式レンズシャッター搭載機の後継モデルとして登場した 〈 minolta A3 〉 のアップグレードバージョンです。
〈 minolta A3 〉と〈 minolta A5 〉
については– コラム –
の項で紹介しています
「 定点合致式 ( 別称 : ゼロメソッド式 )」での内蔵露出計との連動は、露出計の検流計になっている指針の動きを、撮影設定の変更による露出量の増減で補正する仕組みで行われます。
露出計の受光素子には可変抵抗が繋げられていて、絞りリングとシャッター速度リングの設定操作が抵抗値を変えるスライダーとして働くようになっています。
小さな表示窓からのぞく蛍光グリーンのメーター針が連続露出計の指針です。
絞りリングとシャッター速度リングをそれぞれ操作して、指針が中心部の黄色いマークに収まるように合わせる事で、適正露出となる設定値を決定します。
このサイトで紹介している〈 minolta auto wide 〉が、内蔵露出計に撮影設定を連動させる操作方法は 「 追針式 」 と呼ばれる方式で、〈 minolta AL 〉とは異なるものです。
詳しくは
の項で紹介しています
スポンサーリンク
〈 minolta AL 〉が搭載するシャッターは〈 minolta A5 〉に採用されたものと同じ『 OPTIPER CITIZEN MLT 』です。
このシャッターの設定速度は B と 1 ~ 1 / 1000 (s) までの倍数系列となっています。
シャッター羽根の往復時間がシャッターの最高速度となるレンズシャッター機において、35㎜判ではその大多数の製品が搭載するもので 1 / 500 (s) までが最高速度であった事から、『 OPTIPER CITIZEN MLT 』が実現している 1 / 1000 (s) は、高速なシャッタースピードとしてアピールされるポイントとなりました。
これを〈 minolta A5 〉では本体正面の右手側に、〈 minolta AL 〉ではレンズ正面の化粧リングに『 1000 』と記す事で誇示しています。
– 画像左 –
〈 minolta A5 〉– 画像右 –
〈 minolta AL 〉
〈 minolta A5 〉
〈 minolta AL 〉
『 OPTIPER CITIZEN MLT 』を搭載する両機種は 1/1000秒 のシャッター速度を誇ります。
〈 minolta AL 〉には、使用するフィルムの感度を、撮影設定に反映させる操作を行うスライダーが鏡筒に設けられています。
これは連動露出計を搭載しない〈 minolta A5 〉には無かったもので、シャッター速度リング , 絞りリング と同様に、設定操作が可変抵抗と連動して電気露出計の測定値を補正する働きをします。
– 画像左 –
〈 minolta A5 〉
の鏡筒– 画像右 –
〈 minolta AL 〉
の鏡筒
〈 minolta A5 〉
の鏡筒
〈 minolta AL 〉
の鏡筒
- 先端側の操作リングが「 シャッター速度リング 」で、速度表示とライトバリュー表示がある帯状のプレートを挟んだ本体側が「 絞りリング 」。
- 〈 minolta AL 〉の「 絞りリング 」には、フィルム感度設定を行うスライダーが設けられています。
撮影レンズは〈 minolta A5 〉の大口径タイプのバリエーションと同じ「 ROKKOR PF 45㎜ f 2.0 」を搭載しています。
– 画像左 –
〈 minolta A5 〉
– 画像右 –
〈 minolta AL 〉
〈 minolta A5 〉
〈 minolta AL 〉
- 〈 minolta A5 〉には「 ROKKOR TD 45㎜ f2.8 」と「 ROKKOR PF 45㎜ f2.0 」を搭載した製品があります。
画像左の製品は後者の「 ROKKOR PF 45㎜ f2.0 」を搭載したタイプで、「 ROKKOR TD 45㎜ f2.8 」を搭載して発売した製品のスペックアップバージョンとして登場したものです。
- 「 ROKKOR PF 45㎜ f 2.0 」を搭載して発売された〈 minolta AL 〉には、スペックの異なる撮影レンズを搭載したバージョンは登場していません。
〈 minolta A5 〉と〈 minolta AL 〉
については– コラム –
の項で紹介しています。
後の 1963年12月に〈 minolta AL-2 〉が発売されます。
製品名からは、この機種が〈 minolta AL 〉を発展させた後継モデルになっている印象を受けます。
ところが実際には、1962年に同社から発売されている〈 minolta HI-MATIC 〉に、連動露出計を搭載したマニュアル機である〈 minolta AL 〉が持つ基本性能を移し換えて発展させたような製品であり、〈 minolta A3 〉系統の機種とは大きく異なる形態のカメラになっています。
1963年発売 〈 minolta AL-2 〉
– 画像左 –
〈 minolta AL 〉– 画像中央 –
〈 minolta HI-MATIC 〉– 画像右 –
〈 minolta AL-2 〉
〈 minolta AL 〉
〈 minolta HI-MATIC 〉
〈 minolta AL-2 〉
- 3機種ともに、トップカバー正面の右手側には、集光用の小さな魚眼レンズが並ぶ内蔵露出計の受光窓があります。
- 3機種が内蔵する露出計は、撮影設定が適正露出になっている事を確認する機能に特化した連動露出計で、露出計としてのゲージなどを備えた大きな表示窓はありません。
また、〈 minolta AL-2 〉が搭載する撮影レンズは「 ROKKOR PF 45㎜ f1.8 」で、〈 minolta AL 〉 , 〈 minolta HI-MATIC 〉が共に搭載している「 ROKKOR PF 45㎜ f2.0 」からアップグレードした大口径タイプのものです。
– 画像左 –
〈 minolta AL 〉
「 ROKKOR PF 45㎜ f2.0 」– 画像中央 –
〈 minolta HI-MATIC 〉
「 ROKKOR PF 45㎜ f2.0 」– 画像右 –
〈 minolta AL-2 〉
「 ROKKOR PF 45㎜ f1.8 」
〈 minolta AL 〉
「 ROKKOR PF 45㎜ f2.0 」
〈 minolta HI-MATIC 〉
「 ROKKOR PF 45㎜ f2.0 」
〈 minolta AL-2 〉
「 ROKKOR PF 45㎜ f1.8 」
シリーズ名は異なっていても、同じダイキャストボディーが使われている〈 minolta AL-2 〉と〈 minolta HI-MATIC 〉が、外形の近い製品になっている事は当然だとも言えます。
それでも、露出の自動制御に特化した製品である〈 minolta HI-MATIC 〉とフルマニュアル機である〈 minolta AL-2 〉 とでは、機能の違いにより変更が必要となっている外装部品があり、その部分は決して少なくありません。
〈 minolta HI-MATIC 〉ではボディ正面にあったシャッターボタンは、〈 minolta AL-2 〉ではトップカバー上部のオーソドックスな配置へと変更されています。
新たにトップカバー上に移されたシャッターボタンから巻き上げレバーがある位置までの造作には、レイアウトの変更に合わせた違いがあり、巻き上げレバーも異なっています。
– 画像左 –
〈 minolta HI-MATIC 〉– 画像右 –
〈 minolta AL-2 〉
〈 minolta HI-MATIC 〉
〈 minolta AL-2 〉
- 両機種には共通のダイキャストボディーが用いられています。
- 軍艦部は、ファインダーの窓ガラスと魚眼レンズを並べた露出計の受光窓を取り付ける〝 フロントマスク 〟と、それ以外を覆うトップカバーとで構成されています。
搭載レンズの口径も異なりますが、シャッターを操作する構造が全く異なっている両機種では、鏡筒の形態そのものに大きな違いがある事が判ります。
トップカバー上の巻き上げレバーとアクセサリーシューの間には〈 minolta HI-MATIC 〉には無いメーターの表示窓が設けられています。
これは〈 minolta AL 〉と同様の「 定点合致式 」による撮影設定をする際に、メーター針の位置とその動きを確認する為の小さな開口部となっています。
– 画像左 –
〈 minolta HI-MATIC 〉– 画像右 –
〈 minolta AL-2 〉
〈 minolta HI-MATIC 〉
〈 minolta AL-2 〉
- 〈 minolta AL-2 〉のトップカバー上には、露出の決定を「 定点合致式 」で行うためのメーター窓がアクセサリーシューの右手隣りにあります。
- 〈 minolta AL-2 〉の巻き上げレバーは〈 minolta HI-MATIC 〉よりも大型で、それぞれの巻き上げレバーの可動範囲に合わせた形状の違いがトップカバー上部に見られます。
トップカバーの正面部分にある違いですぐ目に留まるのは、機能とは関係しない装飾的な部分です。
ファインダー窓と露出計の受光部とがある正面部分は、トップカバーとは別の〝 フロントマスク 〟として独立した部品になっていて、本体側に直接取り付けられています。
〈 minolta HI-MATIC 〉では鏡筒を挟んだ 〝 フロントマスク 〟 のファインダー窓側が、本体に被るようなかたちで大きくなっていて『 minolta 』のブランドロゴがあしらわれていますが、〈 minolta AL-2 〉にはこれがありません。
一方の鏡筒を挟んだ左側には、両機種共に魚眼レンズが並ぶ露出計の受光部が配置されています。
一見すると判り難いですが受光部の面積に違いがあり、〈 minolta HI-MATIC 〉に比べると〈 minolta AL-2 〉の方が左右に小さくなっています。
– 画像左 –
〈 minolta HI-MATIC 〉– 画像右 –
〈 minolta AL-2 〉
〈 minolta HI-MATIC 〉
〈 minolta AL-2 〉
- 〈 minolta AL-2 〉 には、ファインダー内にメーターを表示する為の〝 採光窓 〟がブライトフレーム用の採光窓とは別に設けられています。
縦に細長いメーター表示用の採光窓は、ブライトフレーム用の採光窓の右手側に隣設けられています。- ファインダー内の表示はブライトフレームの上下にあり、定点合致式のメーターが上で、指針が動いて絞り値を示すゲージが下側です。
絞り表示用の採光は、ブライトフレーム用の採光窓によってカバーされています。- メーター表示用の〝 採光窓 〟が設けられた事によって、レンジファインダー窓のレイアウトが右手側に拡がった〈 minolta AL-2 〉は、〈 minolta HI-MATIC 〉に比べてセレン光素子の受光面積が小さくなっています。
〈 minolta HI-MATIC 〉のトップカバー背面には、使用するフィルムの感度設定をするダイヤルが中央に独立して設けられています。
〈 minolta AL-2 〉ではこの操作を鏡筒に設けられたスライダーで行います。
フィルム感度設定を鏡筒部分に設けられたスライダーで行う操作方法は、〈 minolta AL 〉や〈 HI-MATIC 7 〉とも共通しています。
フィルム感度の設定を行うための独立した操作ダイヤルを本体側に持つ〈 minolta HI-MATIC 〉のレイアウトは、レンズシャッター機としては特異なものになっています。
〈 minolta AL-2 〉のトップカバー上部から背面にかけての外観はスッキリとしていて、〈 minolta HI-MATIC 〉にあったフィルム感度設定用のダイヤルが無いだけでなくファインダー接眼部のカバーもコンパクトになり、露出計の表示窓は〈 minolta AL 〉のものよりもフラットになっています。
このような部分からも〈 minolta AL-2 〉が、露出の自動制御を成し遂げた〈 minolta HI-MATIC 〉の筐体が持つ特徴をそのデザインを含めて肯定的に踏襲して、露出計連動のフルマニュアル機へと発展させた製品である事を感じさせます。
– 画像左 –
〈 minolta HI-MATIC 〉
の背面– 画像右 –
〈 minolta AL-2 〉
の背面
〈 minolta HI-MATIC 〉
の背面
〈 minolta AL-2 〉
の背面
- 〈 minolta HI-MATIC 〉 の背面にはフィルム感度の設定を行うダイヤルがあり、鏡筒のスライダーでの操作となっている 〈 minolta AL-2 〉 とは異なります。
- 貼り革の色は違いますが両機種の裏ブタは同じもので、アクセサリーシューの位置を含めたトップカバーのアウトラインにも違いはなく、ファインダーのアイピースカバーと巻き上げレバーの形状が違いとして目に留まる他は、全体としては近い外形になっています。
– 画像左 –
〈 minolta HI-MATIC 〉
の底部– 画像右 –
〈 minolta AL-2 〉
の底部
〈 minolta HI-MATIC 〉
の底部
〈 minolta AL-2 〉
の底部
- 同じダイキャストボディーの 〈 minolta HI-MATIC 〉 と 〈 minolta AL-2 〉 の底カバーには同じ部品が用いられています。
- 裏ブタとそのロック機構にも同じものが用いられていて、底部を比較すると両機種が同じ筐体構造を持っている事が見て取れます。
このように、両機種では〝 フロントマスク 〟を含むトップカバー全体の様々な部分に造作変更を伴う違いがあります。
それでも両機種が同じデザインを持った製品に見えるのは、全体として共通のデザインが採り入れられているからに他なりません。
〈 minolta HI-MATIC 〉 の筐体をベースにしていても、共用が可能ではない部品を新たに製造するのに際して、〈 minolta AL-2 〉 のデザインを、より製品名に合った印象に仕上げる事も出来たのではないかと思えます。
しかし実際には、そうなってはいません。
名称でこそ 〈 minolta AL 〉 の後継モデルとして発売された 〈 minolta AL-2 〉 は、〈 minolta HI-MATIC 〉 の筐体をベースにした製品であるというだけでなく、名称とは矛盾していても 〈 minolta HI-MATIC 〉 のデザインを肯定的に継承した製品になっているという印象です。
〈 minolta AL-2 〉はトップカバー上の表示窓に加えて、ファインダー内にも露出計と連動した指針が表示されるようになっています。
ファインダー内で露出計と連動した撮影設定の表示をする機能そのものは、製品のベースとなっている 〈 minolta HI-MATIC 〉 でも既に搭載されていました。
その表示は、露光条件が露出を自動制御する機能の作動範囲にある事の確認ができるもです。
〈 minolta AL-2 〉のファインダー内の露出計表示は、「 定点合致式 」 のメーター針をトップカバー上の表示窓の他に、ファインダー内でも確認する事が出来るようになったものです。
更にこのメーター針とは別に、絞りリングの操作と連動して動く指針と設定値の目盛りが設けられていて、絞りの設定操作をファインダー内で確認しながら行う事が出来ます。
あらかじめ任意のシャッター速度を設定しておけば、フォーカシングとフレーミングと同時に、適正露出となる絞り値の設定操作をファインダー内での確認によって行う事が可能です。
また、ファインダー内の表示ではシャッター速度そのものを確認する事は出来ないものの、絞り値を設定してメーター針を確認しながらシャッター速度リングを操作すれば、絞り優先による露出計との連動設定をもファインダー内の確認で行う事が可能です。
当時の製品カタログでは、このファインダー内表示を〝 パーフェクトファインダーシステム 〟という呼称の新機能としてアピールしています。
『 構図 ピント 露出のすべてがファインダーをのぞくと同時に決められるパーフェクトファインダー』という文言で紹介されています。
〈 minolta AL-2 〉は「 定点合致式 」による露出計連動のフルマニュアル機という点で〈 minolta AL 〉の製品としての性格を継承している事を、機種名に冠された『 2 』が表していると理解出来ます。
更に後年には 〈 minolta ALS 〉 , 〈 minolta AL-F 〉 , 〈 minolta AL-E 〉 という機種名の製品が発売されていますが、いずれも 〈 minolta AL 〉 そのものを発展させた製品とはなっていません。
スポンサーリンク
– 画像左 –
〈 minolta ALS 〉
「 1966年 」– 画像中央 –
〈 minolta AL-F 〉
「 1967年 」– 画像右 –
〈 minolta AL-E 〉
「 1968年 」
〈 minolta ALS 〉
「 1966年 」
〈 minolta AL-F 〉
「 1967年 」
〈 minolta AL-E 〉
「 1968年 」
〈 Minolta ・A・ 〉と〈 Minolta ・A-2・ 〉の製品ラインナップ上の位置をリプレイスする形で登場した〈 minolta A3 〉と〈 minolta A5 〉は、内蔵露出計との連動設定を可能にした〈 minolta AL 〉へと発展を遂げています。 その後に〈 minolta AL-2 〉として発売された製品は〈 minolta HI-MATIC 〉の筐体がベースになっており、〈 minolta A3 〉が直接スペックアップして発展した製品としては、〈 minolta AL 〉が実質的な最終モデルであった事になります。 〈 minolta HI-MATIC 〉 は、1960年に発売されていた 〈 minolta Uniomat 〉 が搭載する露出計との連動方式を自動化した製品になっています。 〈 minolta Uniomat 〉および〈 minolta Uniomat II 〉の撮影設定は、シャッタースピードと絞りを決められた組み合わせごとに変更して行う仕組みになっていて、鏡筒にはこの操作を行うリングの他にはフォーカスリングがあるだけで、シャッター速度リング と 絞りリング はありません。 〈 minolta Uniomat 〉 の項で紹介しています 国内外のカメラ市場の拡大に伴って、普及タイプの製品カテゴリーを牽引したのが35㎜判のレンズシャッター機でした。 このサイトで紹介している〈 minolta auto wide 〉は、露出の決定を行うための機能として「 追針式 」による内蔵露出計と連動した撮影設定が可能で、これを初めて実現したカメラです。 の 〈 minolta Uniomat 〉 では 「 追針式 」 のマニュアル操作で行なっていた露出計との連動を、〈 minolta HI-MATIC 〉 ではメーター針を機械的に読み込む仕組みによって撮影設定の自動化を実現しています。 〈 minolta HI-MATIC 〉が発売された当時、すでに露出計の計測をカメラの撮影設定に自動で伝達する仕組みとして 『 EE( イーイー ): Electric Eye ( エレクトリック アイ ) 』 機構が発達してきていました。 絞りとシャッター速度の設定を同時に行うプログラム式シャッターに 『 EE 』 の連動機構を組み合わせた 〈 minolta HI-MATIC 〉 は、撮影設定を完全に自動で行う事が出来るカメラです。 フォーカスリングの他に〈 minolta Uniomat 〉が鏡筒に備える操作リングは、露出計に連動させる追針を動かすと共にプログラムシャッターの設定を行うものでした。 〈 minolta HI-MATIC 〉が鏡筒に備えている操作リングはフラッシュ撮影時にのみ用いる絞りリングになっていて、通常の撮影では ▼ [ AUTO : オート ] のマークがある位置にセットしておきます。 先に紹介しました 〈 minolta AL-2 〉 の機能は、〈 minolta HI-MATIC 〉 をプログラムシャッター式ではないフルマニュアル機とした上で、露出計との連動を 〈 minolta AL 〉 と同じ方式の 「 定点合致式( ゼロメソッド式 )」 にした内容を持っていました。 そして次に紹介する 〈 minolta HI-MATIC 7 〉 は、撮影設定の自動制御を可能にした 〈 minolta HI-MATIC 〉 の機能を発展させた後継モデルとなる製品です。 内蔵露出計の測光素子に 「 CdS 」 が用いられた 〈 minolta HI-MATIC 7 〉 は、大きな 「 セレン光電池 」 の受光面を持つ 〈 minolta HI-MATIC 〉 を含むそれまでの内臓露出計を搭載した機種とは、その点だけをとっても外観に大きな違いがあります。 「 セレン光電池 」 を受光素子とする場合には、測定精度を確保する為に受光面積を大きくする必要があります。 『 CdS 』が受光素子となり、大きな受光面積を必要としなくなった内蔵露出計の受光窓には、タブレット状の集光レンズが一つだけ取り付けられています。 本体部分には 〈 minolta HI-MATIC 〉 と共通した箇所もありますが、〈 minolta AL-2 〉 には同じダイキャストボディーが使われているのに対して、〈 minolta HI-MATIC-7 〉 では新しく更新されたものになっています。 マニュアル撮影の機能を持たない〈 minolta HI-MATIC 〉の鏡筒にある操作リングは、フラッシュ撮影の際に用いる絞りリングとして働くものでした。 〈 minolta HI-MATIC 7 〉には絞りリングとシャッター速度リングが備わっていて、オートを解除するとフルマニュアルでの撮影設定が可能になります。 これらの機能は、新規に搭載された 『 SEIKOSHA – LA 』 シャッターにより実現されています。 ここまでに紹介した部分以外にも、〈 minolta HI-MATIC 〉では本体正面にあるシャッターボタンはトップカバー上のオーソドックスな位置となり、フィルム感度を設定する背面のダイヤルは廃止されて鏡筒のスライダーによる操作となっています。 〈 minolta HI-MATIC 〉は、プログラムシャッターと内蔵露出計とを機械的に連動させる事によって、露出の自動制御を初めて実現したカメラでした。 そして〈 minolta HI-MATIC 7 〉は、この露出の自動制御機能を装備した後継モデルとして〝 HI-MATIC 〟の名称を冠して登場しました。 その後も 『 HI-MATIC 』 の名称を冠した製品は数多く登場し、露出や焦点合わせなどの撮影設定が自動化して発展する中で、同社のコンパクトカメラの代名詞となるシリーズ名として永く展開されて行く事になります。 ここに紹介しました〈 minolta AL-2 〉と〈 minolta HI-MATIC 7 〉は共に 1963年12月の発売です。 〈 minolta HI-MATIC 7 〉は、露出の自動設定を初めて実現した〈 minolta HI-MATIC 〉の看板機能を発展させた後継モデルとして、〝 HI-MATIC 〟の名称を冠して発売されました。 一方の 〈 minolta AL-2 〉 は、マニュアル操作による内蔵露出計への連動方法として発達した 「 定点合致式 」 を採用していて、この方式の製品として実績のある 〈 minolta AL 〉 を継承する製品名で発売されました。 このように、同時発売だった 〈 minolta AL-2 〉 と 〈 minolta HI-MATIC 7 〉 それぞれの仕様を比べてみると、どちらも 〈 minolta HI-MATIC 〉 を次世代のスペックへとアップグレードした機種である事が判ります。 オートワイド12 スポンサーリンク スポンサーリンク〈 minolta HI-MATIC 〉〈 minolta A5 〉
〈 minolta AL-2 〉〈 minolta AL 〉〈 minolta HI-MATIC : ミノルタ ハイマチック 〉は、露出の決定を完全に自動化した製品として 1962年の3月に発売されました。
1962年発売 〈 minolta HI-MATIC 〉
製品の発表と実機の展示が同時に行われていた 〈 minolta Uniomat II 〉 が前年の 1961年12月に発売となっていましたので、発表からは少し時間が経ってからの発売となっています。
〈 minolta Uniomat II 〉 は、〈 minolta Uniomat 〉 を 〈 minolta HI-MATIC 〉 の登場に合わせてデザイン変更したモデルです。
この機能は 『 OPTIPER UNI CITIZEN : オプチパー ユニ シチズン 』 という 「 プログラム式シャッター 」 の搭載によって実現されています。
については– コラム –
〈 minolta Uniomat 〉
1960年発売プログラム式シャッターの機構を内蔵露出計と「 追針式 」で連動させたのが、〈 minolta Uniomat 〉が実現した連動方式でした。
カメラの低価格化が実現されていく中で、カメラの消費を後押しする上でも撮影設定を自動化する事が、特に大衆機と呼ばれる製品に求められていました。
このような背景から、専門的な知識を必要とせずに撮影が行える製品への開発要求は常にあり、適正な露光を行うための設定操作を自動で行える製品開発が行われていました。
内蔵露出計に撮影設定を連動させる機能は、「 追針式 」と、この項で紹介している〈 minolta AL 〉と〈 minolta AL-2 〉が搭載している「 定点合致式 」とによって初めて実現されます。
「 定点合致式 」を初めて実現したカメラは『 マミヤ光機 株式会社 』が製造した〈 ELCA: エルカ 〉 でした。
どちらも 1958年3月の発売で、内蔵露出計への完全連動を実現した最初のカメラとして、共にその栄誉に浴する製品でありながらも、採用した連動方式はそれぞれ違うものになっています。
〈 minolta auto wide 〉
〈 MAMIYA ELCA 〉〈 minolta auto wide 〉と〈 MAMIYA ELCA 〉
については– コラム –
項で紹介しています〈 minolta HI-MATIC 〉は、プログラム式シャッターと露出計との連動を「 追針式 」によるマニュアル操作を中継せずに自動化したもので、撮影設定の操作を行う必要がありません。
『 EE 』 という呼称はレンズを瞳になぞらえて、絞り羽根が虹彩の様に働いて適切な露出が自動的に得られる事を意味したものです。
この機構は絞り羽根の動きを露出計に連動させるもので、シャッターボタンを押し込む事で作動します。
階段状の部品がメーター針の動く範囲全体を押さえ込んで、メーター針の位置によって変わる押さえ込み量の違いを、機械的に絞り羽根の開閉に伝達させる仕組みです。
そして、この仕組みを初めて実現したカメラでした。〈 minolta HI-MATIC 〉が搭載するシャッターは『 CITIZEN UNI E 』というもので、〈 minolta Uniomat 〉に搭載されている『 OPTIPER UNI CITIZEN 』が自動連動用に改良されたものです。
リングの指標を ▼ の位置から動かすと、露出計とシャッターの連動が解除されます。
露出計との連動が解除されるとプログラムシャッターの機能が働かなくなり、シャッター速度は 1 / 30 (s) に固定されます。
このとき操作リングでは絞りだけを設定する事が出来て、フラッシュ撮影での適切な絞り値の設定を行う事を目的としています。露出の自動制御を実現している〈 minolta HI-MATIC 〉の製品としての性格は、〈 minolta AL-2 〉と同時に発売された〈 minolta HI-MATIC 7 〉によって引き継がれて発展します。
〈 minolta HI-MATIC 7 〉
1963年発売
製品としての 〈 minolta AL-2 〉 は、実質的には 〈 minolta HI-MATIC 〉 のバリエーションモデルといえるもので、発売は 1963年12月 です。
発売は 1963年の12月で、〈 minolta AL-2 〉 と同時発売の製品です。
別系統のシリーズ名を持つ 〈 minolta AL-2 〉 が 〈 minolta HI-MATIC 〉 のデザインを踏襲した製品である事とは対照的に、〝 HI-MATIC 〟 をその名称に冠した 〈 minolta HI-MATIC 7 〉 の外観は 〈 minolta HI-MATIC 〉 とは大きく異なっています。
〈 minolta HI-MATIC 〉
〈 minolta HI-MATIC 7 〉
「 CdS 」 は、「 Cadmiun Sulfide : 硫化カドミウム 」 を表す組成式で、受光素子としてはセレンを用いたものよりも低照度で機能する特性を持ちます。
また、光を受けて発電する 「 セレン光電池 」 を受光素子とする露出計とは異なり、「 CdS 」 は通電した状態で受光素子として機能するため〝 電源 〟が必要となります。
このため 〈 minolta HI-MATIC 7 〉 は、露出計を作動させる電源用の電池室を底部に備えています。
〈 minolta HI-MATIC 〉
の底部
〈 minolta HI-MATIC 7 〉
の底部
セレン光電池式の露出計の多くは受光部の窓に集光用の小さな魚眼レンズを並べていて、これを内蔵した製品の外観を特徴付けています。
「 CdS 」素子での測光には大きな受光面積を必要とせず、受光部の窓が製品の外観に大きく影響する事はありません。
〈 minolta HI-MATIC 7 〉 の露出計受光部は鏡筒正面にあり、このレイアウトを採用した初めてのカメラでした。
化粧リング上部の中央に小さな受光窓が設けられていて、楕円形をした樹脂製の集光レンズが取り付けられています。
〈 minolta HI-MATIC 〉
〈 minolta HI-MATIC 7 〉
トップカバー正面の右手側いっぱいに、セレン光電池の受光面積が大きく確保されています。
スッキリとした外観になったトップカバー正面の右手側には 『 minolta 』 のロゴが記されています。〈 minolta HI-MATIC 7 〉
鏡筒正面の上部に配置されている 「 CdS 」 の露出計受光窓
外装に露出計の表示窓を持たないのは 〈 minolta HI-MATIC 〉 と同じですが、ファインダー内のメーター針は自動制御の有効範囲の確認だけでなく、自動設定された 「 EV 」 値を表示します。〈 minolta HI-MATIC 7 〉は、露出の自動制御を可能にした〈 minolta HI-MATIC 〉の機能に加えて、マニュアルでの撮影設定が可能になっています。
この操作をマニュアル撮影に応用する事も出来ますが、オートを解除するとシャッター速度が 1 / 30 (s) に固定されますので限定的な使用となります。
この時にも、内蔵露出計を利用する事が出来るようになっています。
マニュアル操作になるとファインダー内のメーターとカメラとの連動は解除され、この状態でメーターが指示するのは適正露出を得るための設定値となり、「 EV 」 表示専用の独立した露出計として働きます。
マニュアル操作での〝 絞り 〟 と 〝 シャッタースピード 〟の組み合わせで設定されている 「 EV 」 値は、絞りリングの A 表記の右手隣りの開口部の表示で確認できます。〈 minolta HI-MATC 7 〉
鏡筒に記されている 『 SEIKOSHA – LA 』 のシャッター銘
いずれも操作方法のスタイルだけでなく、全体の外観に大きく影響する部分の違いです。
〈 minolta HI-MATIC 〉
〈 minolta HI-MATIC 7 〉
トップカバー上のシャッターボタンの位置としてオーソドックスな位置には、レリーズケーブルを取りつけるためのネジ穴が設けられています。
本体側にシャッターボタンがある〈 minolta HI-MATIC 〉ではレリーズケーブル用のネジ穴が別に設けてありますが、シャッターボタンがトップカバー上の配置となった〈 minolta HI-MATIC 7 〉ではシャッターボタンの中央にネジ穴が設けられたオーソドックスなスタイルになっています。
〈 minolta HI-MATIC 〉
背面中央のフィルム感度設定ダイヤル
〈 minolta HI-MATIC 7 〉
鏡筒下部のフィルム感度設定スライダー
ASA と DIN それぞれのフィルム感度表示が、ダイヤル正面の同心円を二分割して明暗を反転させたスタイルで表記されています。
ダイヤルの側面を引き上げながら回転させて、フチに平行に引かれた黒い線の指標を、使用するフィルム感度の位置に合わせてセットします。
ASA と DIN それぞれのフィルム感度表示がスライダーの上下に記されています。
スライダーのノブの中央に爪掛けと指標を兼ねた溝があり、ノブを左右に動かして使用フィルムの感度に合わせてセットします。
受光素子には、前年の7月に同社から発売された 〈 SR-7 〉 でカメラに初めて搭載された 「 CdS 」 が採用されて精度の向上が図られていると共に、その特性が活かされたスタイルへと外観が一新されています。
オート撮影と併せてフルマニュアルの撮影機能をも装備し、加えて撮影レンズがアップグレードした〈 minolta HI-MATIC 7 〉は、前モデルの〈 minolta HI-MATIC 〉とは全く別の新しい製品だと言えるほどに、その機能も外観も大きな変化を遂げた製品になっています。
同時発売の両機種には「 ROKKOR PF 45㎜ f1.8 」が搭載され、同世代の製品として共通のスペックを有しています。
そして〈 minolta AL-2 〉と〈 minolta HI-MATIC 7 〉は、どちらも〈 minolta HI-MATIC 〉を発展させた製品となっています。
〈 minolta HI-MATIC 〉
〈 minolta AL-2 〉
〈 minolta HI-MATIC 7 〉
内蔵露出計の受光素子として新たに採用した 「 CdS 」 によって受光面積が劇的に小さくなり、露出計を内蔵するカメラの姿そのものを大きく変えるスタイルになっています。
ファインダー内のメーターは〝 EE 〟の警告表示に加えて 「 EV 」 値の表示が可能となり、プログラム式シャッターによる〝 EE 〟機構での撮影をより確実なものにしています。
マニュアル操作では内蔵露出計が指示する 「 EV 」 値を用いた設定をする事が可能で、単純に〝 EE 〟機能を補完するためのフルマニュアル対応ではない充実した装備となっています。
内蔵露出計の受光素子には従来と同じセレン光電池が用いられていますが、露出計を内蔵しない 〈 minolta A5 〉 に露出計を組み込んで連動機としてアップグレードした 〈 minolta AL 〉 とは違い、露出計の内蔵を前提として開発された 〈 minolta HI-MATIC 〉 の筐体構造をベースとた製品です。
セレン光電池の受光パネルとファインダー窓の板ガラスを取り付けるフレームが、軍艦部のフロントマスクとして本体に直接取り付けられていて、大きな受光面積の確保と堅牢性を兼ね備えた合理的な構造を持っています。
撮影設定の自動化を成し遂げた 〈 minolta HI-MATIC 〉 に実績のある連動方式を組み込んで、充実したファインダー機能とスペックアップした撮影レンズを搭載して、完成度と信頼性が高められた製品になっています。
商品としては 〈 minolta HI-MATIC 7 〉 が 〈 minolta HI-MATIC 〉 の後継モデルである事をその製品名が表しています。
一方の 〈 minolta AL-2 〉 は、〈 minolta AL 〉 の後継モデルとしての製品名でライナップされています。
実質的に 〈 minolta HI-MATIC 〉 のマニュアル操作バージョンだといえる 〈 minolta AL-2 〉 が〝 HI-MATIC 〟でないのは、自動化を実現して成功した製品である〝 HI-MATIC 〟を冠する事が、発売当時の商品戦略では許されなかったからなのかも知れません。