〈 minolta A3 〉 は、製品名にある『 A3 』 によって、ともすれば 〈 Minolta ・A-2・ 〉 との共通点を多く持つ同系統の後継製品であったという印象を受けます。
しかし実際には 〈 Minolta ・A・ 〉 の系統とは多くの点で異なったカメラで、それまで《 千代田光学精工 株式会社 》が製造していた35㎜ 判レンズシャッター機とはスタイルの違う製品になっていました。
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– 画像左 –
〈 Minolta ・A-2・ 〉– 画像右 –
〈 minolta A3 〉
〈 Minolta ・A-2・ 〉
〈 minolta A3 〉
〈 Minolta ・A-2・ 〉 は、1955年の発売以降も搭載シャッターのアップグレードを主とした種々の改良が重ねられて、1958年までには当初の仕様とはスペックのかなり異なったカメラに発展していました。
その後の1959年に発売された 〈 minolta A3 〉 は、アップデートが重ねられた〈 Minolta ・A-2・ 〉のスペックをベースとした基本性能の向上と、スタイルの一新が図られています。
B、1〜500 (1/s) 倍数系列のシャッターと 45㎜ F2.8の撮影レンズは更新され、絞りは星型に絞られる6枚羽根から正多角形の絞りになる8枚羽根のものに変更されています。
その一方で、〈 Minolta ・A-2・ 〉 では 『 採光窓式 』 だったファインダーが 『 反射鏡式 』 にダウングレードされている他、エントリーモデルとしての価格設定を実現するためと思える工夫の跡が各所に見受けられます。
〈 Minolta ・A-2・ 〉でのアップデートがベースになっていながらも〈 minolta A3 〉がそれまでの〈 Minolta ・A・ 〉系統のカメラと大きく異なっているのは、シャッターの操作方法が変更された事に最大の理由があります。
〈 Minolta ・A・ 〉系統のカメラは、鏡筒にあるレンズシャッターを本体側から操作する仕組みを持っています。
〈 Minolta ・A-2・ 〉の場合は、トップカバー上の後方にシャッター速度ダイヤルが配置されています。
また、エプロン部分に 「 セルフタイマーのセット 」 と 「 シンクロ接点の切り替え 」 を操作する構造がレイアウトされています。
メカニズムが配置されているエプロン部分には厚みがあり、これは 〈 Minolta ・A・ 〉 系統のカメラに共通したデザイン上の特徴になっています。
– 画像左 –
〈 Minolta ・A-2・ 〉
トップカバー上部– 画像右 –
〈 minolta A3 〉
トップカバー上部
〈 Minolta ・A-2・ 〉
トップカバー上部
〈 minolta A3 〉
トップカバー上部
- 画像左の〈 Minolta ・A-2・ 〉の軍艦部は、レンジファインダーの部分が凸状になったトップカバーの左右に巻き戻しノブと巻き上げレバーがあって立体的になっています。
- 画像右の〈 minolta A3 〉は全体的にフラットで、巻き上げレバーや巻き戻しクランクといった操作部分の形状も平面的なデザインになっています。
– 画像左 –
〈 Minolta ・A-2・ 〉
トップカバー 正面側– 画像右 –
〈 minolta A3 〉
トップカバー 正面側
〈 Minolta ・A-2・ 〉
トップカバー 正面側
〈 minolta A3 〉
トップカバー 正面側
- 画像左の〈 Minolta ・A-2・ 〉は本体部分に厚みがあり、特に正面のエプロン部分はトップカバーから階段状にせり出しています。
フォーカシングでは鏡筒全体がエプロン部分から繰り出されます。
- 画像右の〈 minolta A3 〉の本体部分は平面的で厚みがなく、トップカバーからエプロン部分にかけてもフラット。
デザイン的にもエプロンと呼べるような部分は設けられていません。
鏡筒にはコッキングレバー以外のシャッター操作をする機能が集められています。
〈 Minolta ・A・ 〉系統のカメラの本体側にあったシャッター速度ダイヤルが〈 minolta A3 〉では廃止されて、鏡筒にシャッター速度リングを備えるスタイルになっています。
さらに〈 Minolta ・A-2・ 〉のエプロン部分にあった「 セルフタイマーのセット 」と「 シンクロ接点の切り替え 」レバーも、〈 minolta A3 〉では鏡筒部分に設けられています。
この事が、それまでの〈 Minolta ・A・ 〉系統のカメラとは大きく異なった外観と、操作上の決定的な違いを〈 minolta A3 〉にもたらしています。
– 画像左 –
〈 Minolta ・A-2・ 〉
トップカバー上の
シャッター速度ダイヤル– 画像右 –
〈 minolta A3 〉
鏡筒先端の
シャッター速度リング
〈 Minolta ・A-2・ 〉
トップカバー上の
シャッター速度ダイヤル
〈 minolta A3 〉
鏡筒先端の
シャッター速度リング
- 画像左:〈 Minolta ・A-2・ 〉のシャッター速度ダイヤルは、トップカバー上にあります。
- 画像右:〈 minolta A3 〉の鏡筒には3つの操作リングがあり、このうち最も先端側にあるのがシャッター速度リングです。
〈 Minolta ・A-2・ 〉と〈 minolta A3 〉のシャッター操作については
それぞれを次の項で詳しく紹介しています。
– コラム –
– コラム –
このように〈 Minolta ・A-2・ 〉と〈 minolta A3 〉とでは、シャッターを操作するレイアウトが大幅に異なっていて、これはシャッターの取り付け方法の変更による構造的な違いを伴っています。
〈 minolta A3 〉はシャッターを取り付ける向きが、それまでの〈 Minolta ・A・ 〉系統のカメラとは前後が逆になっています。
この構造の変更によって〈 minolta A3 〉では絞り羽根とシャッター羽根の前後が、それまでの〈 Minolta ・A・ 〉系統のカメラとは逆になっている他、「 セルフタイマーのセット 」 と 「 シンクロ接点の切り替え 」 レバーの操作方向がそれぞれ逆になっています。
– 画像左 –
〈 Minolta ・A-2・ 〉
セルフタイマーセットレバーは
エプロン側面の下部右手側– 画像右 –
〈 minolta A3 〉
セルフタイマーセットレバーは
鏡筒側面の上部右手側
〈 Minolta ・A-2・ 〉
セルフタイマーセットレバーは
エプロン側面の下部右手側
〈 minolta A3 〉
セルフタイマーセットレバーは
鏡筒側面の上部右手側
- 画像左 の〈 Minolta ・A-2・ 〉は、エプロン正面の右斜め下にセルフタイマーのセットレバーがあります。レバーを矢印の方向に押し下げて、V マークの位置にするとセット出来ます。
- 画像右 の〈 minolta A3 〉は、鏡筒の焦点リングと絞りリングの間にあるグリーンに塗装されたレバーがセルフタイマーです。
レバーを左手側に倒して V マークの位置にするとセルフタイマーがセットされます。
– 画像左 –
〈 Minolta ・A-2・ 〉
シンクロ接点切替えレバーは
エプロン側面の右手側– 画像右 –
〈 minolta A3 〉
シンクロ接点切替えレバーは
鏡筒側面の右手側
〈 Minolta ・A-2・ 〉
シンクロ接点切替えレバーは
エプロン側面の右手側
〈 minolta A3 〉
シンクロ接点切替えレバーは
鏡筒側面の右手側
- 画像左 の〈 Minolta ・A-2・ 〉は、エプロン右手側の側面にシンクロ接点の切り替えレバーがあります。
開口部分の形状がレバーの誤操作を防ぐカギ状になっています。
( 画像は[ X 接点 ]の位置にある状態で、レバーを「 上げる 」と[ M 接点 ] )
- 画像右 の〈 minolta A3 〉は、鏡筒の右手側にある赤いレバーがシンクロ接点の切り替えレバーです。
[ X 接点 ]と[ M 接点 ]を切り替える上下の操作方向が〈 Minolta ・A-2・ 〉とは逆になっています。
( 画像は[ X 接点 ]の位置にある状態で、レバーを「 下げる 」と[ M 接点 ] )
「 セルフタイマー 」と「 シンクロ接点の切り替え 」レバーと同様に、〈 minolta A3 〉では「 フラッシュ接続プラグ 」もエプロン部分から鏡筒に移動しています。
– 画像左 –
〈 Minolta ・A-2・ 〉
フラッシュ接続プラグは
エプロン正面の左手側– 画像右 –
〈 minolta A3 〉
フラッシュ接続プラグは
鏡筒側面の左手側
〈 Minolta ・A-2・ 〉
フラッシュ接続プラグは
エプロン正面の左手側
〈 minolta A3 〉
フラッシュ接続プラグは
鏡筒側面の左手側
鏡筒側面の左下にある〈 minolta A3 〉のフラッシュ接続プラグは、フォーカスリングと絞りリングの間にあるスペースから剥き出しの状態で突き出ています。
これでは操作上の問題となるだけでなく、プラグの保全上も望ましくない状態です。
影響の少ない位置に設けられていますが、価格設定を理由として簡易的な造作になったのだと想像が出来ます。
幅の狭い〈 minolta A3 〉のフォーカスリングに取り付けられた指掛かりを補助する半円形のノブは、鏡筒を繰り出す操作では「 フラッシュ接続接プラグ 」と近くなります。
後にアップグレードバージョンとして発売された〈 minolta A5 〉では、フラッシュ撮影でのフォーカシングを改良するものとして、ノブの取り付け位置が僅かですが右手側に移されています。
〈 Minolta ・A-2・ 〉 と 〈 minolta A3 〉 が全く異なる姿のカメラになったのは、本体と鏡筒側の役割が大きく変わった事による不可避的なものであったといえます。
シャッターを操作する構造がなくなった〈 minolta A3 〉のエプロン部分は厚みがないばかりか、鏡筒が立ち上がる間際までレンズボードと本体が貼り皮で一体的にカバーされて、エプロン部分そのものを持たないフラットなデザインになっています。
また、反射鏡式のファインダーの採用といった、価格を抑えるための仕様が〈 minolta A3 〉の外観を特徴付けてもいます。
これらの技術的な側面によって〈 Minolta ・A・ 〉/〈 Minolta ・A-2・ 〉 に続いた〈 minolta A3 〉が、その名称と普及機としての商品的な性格を引き継いでいながらも、外観の全く異なるカメラになった理由を説明する事が出来ます。
しかし、〈 Minolta ・A-2・ 〉 から 〈 minolta A3 〉 へのスタイルの飛躍は非常に大きく、これらの技術的な理由があっても十分な説得力を持てない程に、両者の姿は異なっています。
これを補足する説明として、この時期に 《 千代田工学精工 株式会社 》 の主力製品を大きくシフトするような製品開発が行われた事と、これと合わせるように新しいデザイン的なアプローチがあった事を挙げる事が出来ます。
– 画像左 –
〈 Minolta ・A-2・ 〉– 画像右 –
〈 minolta A3 〉
〈 Minolta ・A-2・ 〉
〈 minolta A3 〉
1958年に《 千代田工学精工 株式会社 》は、〈 minolta-35 MODEL IIB 〉と 〈 SR-2 〉 という、2つの「 フォーカルプレーン・シャッター 」方式の製品を発売しています。
〈 minolta-35 MODEL IIB 〉 は[ スクリューマウント ]によるレンズ交換式の「 フォーカルプレーン・シャッター 」を搭載した『 レンジファインダー 』カメラで、1948年に発売された 〈 Minolta 35 〉 シリーズの最終モデルとなった製品です。
一方の 〈 SR-2 〉 は同社初となるタイプの製品で、独自の[ バヨネットマウント ]によるレンズ交換式の「 フォーカルプレーン・シャッター 」搭載の『 一眼レフ 』カメラでした。
この2つの製品の発売は、《 千代田工学精工 株式会社 》が「 フォーカルプレーン・シャッター 」搭載のレンズ交換式 35 ㎜ フィルムカメラの主力を、『 レンジファインダー 』カメラから『 一眼レフ 』カメラへと大きくシフトした事を示しました。
そして同じく1958年、同社が初めて製品デザインを社外に求めて製造した 〈 minolta auto wide 〉 そして 〈 minolta V2 〉が発売されました。
この2つの製品は 「 内臓露出計への完全連動 」と「 シャッター速度 1/2000(秒)」 とがそれぞれ試みられた 35 ㎜判の「 レンズ・シャッター 」搭載機で、この試みを初めて実現したカメラです。
デザインを手掛けたのは工業デザイナーグループの 《 KAK 》 でした。
この年にリニューアルされた 《 ミノルタ 》 ブランドの新しいロゴもまた 《 KAK 》が手掛けたものです。
この1958年という年は 〈 minolta A3 〉発売の〝 前年 〟にあたる年です。
3月に〈 minolta auto wide 〉 が発売され、4月(9月)に 〈 minolta V2 〉、5月に 〈 minolta-35 MODEL IIB 〉 と続きます。そして10月に 〈 SR-2 〉 が発売となります。
時系列の前者2つの製品では世界初となる機能の搭載が試みられ、これを新たなデザイン的アプローチによって実現しています。
そして後者2つの製品によって、同社が製品戦略を大きく転換した事を示しました。
《 KAK 》のデザインによる新しいロゴタイプは〈 minolta auto wide 〉 に初めて記され、それ以降に発売された新製品に記されるようになります。
新しいロゴタイプをまとった 〈 minolta-35 MODEL IIB 〉は、同シリーズの他のモデルと基本的に同じ姿でありながらも、不思議とそれまでの 〈 Minolta 35 〉シリーズとは違う雰囲気を持っているように思えます。
〈 Minolta ・A-2・ 〉にはレンズ交換を可能にしたモデルがあります。 交換レンズは焦点距離 100㎜の専用望遠レンズが新たに製造されました。 望遠レンズとセットになったキット販売の他、望遠レンズ単体での販売とアフターサービスでレンズ交換に対応させる改造が提供されました。 の項でも紹介しています
撮影レンズの全群をスクリュー式で取り外せる構造がそのままレンズ交換の仕組みに応用されています。
エプロン部分に交換レンズと距離計との連動を担うアーム状の部品が新たに取り付けられている他には、通常の〈 Minolta ・A-2・ 〉との外見上の違いは特にありません。
望遠レンズの前群部分にあるレールを、本体のアーム部分の位置に鏡筒のリングで固定するとカムが働くようになり、本体のヘリコイドが回転する動きで交換レンズの前群を直進式に繰り出す事ができます。この時、本体のヘリコイドも回転によって同時に繰り出されます。
本体側が回転式で望遠レンズ側は直進式で繰り出される動きは特徴的で、この全体の繰り出し量に距離計が連動する仕組みになっています。
また、ファインダーには 100㎜用の視野枠が追加されています。交換レンズは専用の TELE ROKKOR 4.8/100
1958年の発売ですが、この製品に新しいロゴが記されて製造される事はありませんでした。
〈 Minolta ・A-2・ LT 〉
と
「 TELE ROKKOR 100㎜ f4.8 」
については– コラム –
1959年に発売された 〈 minolta A3 〉のスタイルは、前年に発売された4つの機種によって示された新たな方向性を、普及製品のモデルチェンジによって強調的に表わそうとしたかのようです。
モデル名が〈 Minolta ・A-3・ 〉ではなく〈 minolta A3 〉である事が象徴的です。
トップカバーに記されているモデル名が 《 KAK 》による新しいロゴタイプであるのは勿論のこと、新しい構造によってフラットになったエプロン部分には 『 minolta 』のブランドロゴのサインがあります。
グリーンカラーで記されたロゴは、いかにも新鮮な印象です。
– 画像左 –
〈 minolta A3 〉
トップカバー上にある
『 minolta A3 』のモデル名– 画像右 –
〈 minolta A3 〉
本体正面にある
『 minolta 』のブランドロゴ
〈 minolta A3 〉
トップカバー上にある
『 minolta A3 』のモデル名
〈 minolta A3 〉
本体正面にある
『 minolta 』のブランドロゴ
- 〈 minolta A3 〉のモデル名は、《 KAK 》によってデザインされた新しいロゴタイプで記されています。
- 鏡筒の右手側にある張り革で覆われていないスペースに、同じく《 KAK 》がデザインした『 minolta 』のブランドロゴが緑色の印字で記されています。
こうして、〈 minolta A3 〉はエントリーモデルにおける 《 千代田工学精工 株式会社 》の新たなスタンダードを担う事になります。
そして、翌年の1960年に〈 minolta A5 〉が発売されます。このモデルは 〈 minolta A3 〉をアップグレードした製品です。
〈 minolta A5 〉では、ファインダー、撮影レンズ、そしてシャッターのスペックアップが図られています。
ファインダーが反射鏡式から採光窓式となり、撮影レンズは F2.8 のほかに口径が大きい F2.0 の製品が設定されました。そしてシャッターは、最高速度 1/1000(秒)を実現した『 OPTIPER CITIZEN MLT 』を搭載しています。
– 画像左 –
〈 minolta A3 〉
『 ROKKOR TD 45㎜ F2.8 』搭載モデル– 画像右 –
〈 minolta A5 〉
『 ROKKOR TD 45㎜ F2.8 』搭載モデル
〈 minolta A3 〉
『 ROKKOR TD 45㎜ F2.8 』搭載モデル
〈 minolta A5 〉
『 ROKKOR TD 45㎜ F2.8 』搭載モデル
– 画像左 –
〈 minolta A5 〉
『 ROKKOR TD 45㎜ f2.8 』搭載モデル– 画像右 –
〈 minolta A5 〉
『 ROKKOR PF 45㎜ f2.0 』搭載モデル
〈 minolta A5 〉
『 ROKKOR TD 45㎜ f2.8 』搭載モデル
〈 minolta A5 〉
『 ROKKOR PF 45㎜ f2.0 』搭載モデル
〈 minolta A5 〉のリリースによって、〈 Minolta ・A・ 〉 と 〈 Minolta ・A-2・ 〉 が担っていた製品カテゴリーは 〈 minolta A3 〉 と 〈 minolta A5 〉 に置き換えられる形となります。
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このスペックアップによる〈 minolta A3 〉から〈 minolta A5 〉へのアップグレードは、ちょうど〈 Minolta ・A・ 〉と〈 Minolta ・A-2・ 〉の関係と重なります。
2つの機種は併売されて、エントリーモデルの中でも価格差とスペックの異なる製品バリエーションとしてラインナップされ、〈 Minolta ・A・ 〉と〈 minolta ・A-2・ 〉が担っていた製品の位置をそのまま置き換えるものになっています。
こうしてみると、〈 Minolta ・A・ 〉が〈 minolta A3 〉に、そして〈 Minolta ・A-2・ 〉は〈 minolta A5 〉へとそれぞれモデルチェンジして、それまでの 『 ・A・ 』 シリーズが新しい 『 A 』 シリーズの製品へと世代交代している事に気付きます。
- 画像左上:〈 Minolta ・A・ 〉( セルフタイマー付の『 CITIZEN 』シャッター搭載 )
- 画像右上:〈 Minolta ・A-2・ 〉( 『 CITIZEN MVL 』シャッター搭載 )
- 画像左下:〈 minolta A3 〉( 『 ROKKOR TD 45㎜ f2.8 』搭載 )
- 画像右下:〈 minolta A5 〉( 『 ROKKOR PF 45㎜ f2.0 』搭載 )
– コラム – の〈 minolta A3 〉と〈 minolta A5 〉
については
項で紹介しています。
〈 Minolta ・A-2・ 〉から〈 minolta A3 〉へのモデルチェンジには、一つの機種の更新として説明する事が難しい、スタイルの大きな変化が見られました。
これは、当時の《 千代田工学精工 株式会社 》が展開した戦略的な製品の転換を背景にしたものだと捉える事が出来ます。
新しいブランドロゴの採用や外部デザイナーを起用した製品開発などからは、新しい取り組みをデザインによって強調しようとした意図を読み解く事が出来ます。
〈 Minolta ・A-2・ 〉から大きな変化を遂げた〈 minolta A3 〉のデザインと操作スタイルには、この事が最も象徴的に表れていると感じます。
〈 Minolta ・A-2・ 〉と〈 minolta A3 〉の製品パッケージ
〈 Minolta ・A-2・ 〉と〈 minolta A3 〉の取り扱い説明書
《 KAK 》がデザインに関わって製造された〈 minolta auto wide 〉以降のモデルではパッケージデザインの刷新も図られています。
〈 Minolta ・A-2・ 〉のパッケージは《 千代田光学精工 株式会社 》がアメリカへ進出していくなかで採用されていた『 Minolta 』の頭文字〝 M 〟を積み重ねたようなグラフィックが使用されているものです。
〈 minolta auto wide 〉のパッケージでは M を積み重ねたグラフィックは左右の側面にだけ用いられています。
〈 minolta V2 〉のパッケージからは M を積み重ねたグラフィックは使用されなくなって行きます。〈 minolta auto wide 〉の製品パッケージ
Minolta ・A-2・ 〉 〈 minolta A3 〉 〈
- 〈 Minolta ・A-2・ 〉の巻き戻しは「 ノブ 」式ですが、〈 minolta A3 〉では「 クランク 」式になっています。
- どちらのモデルも、フィルムの装填と取り出しは巻き戻し軸を引き上げて行う仕組みです。
〈 Minolta ・A-2・ 〉の巻き戻し軸は、ノブを引き出す構造がある二段式になっています。
裏蓋を閉じた状態ではノブだけを引き上げる事が出来ます。
裏蓋を開けるとロックが解除されて、パトローネ室から巻き戻し軸全体を引き上げる事が出来ます。
〈 minolta A3 〉の巻き戻しクランクは板状の部品に小さなツマミが付いたものです。
決して造作が良いとはいえないものですが、フラットなトップカバーにマッチする平面的なデザインです。
巻き戻し軸を引き上げる時には、円盤のような形状の巻き戻しクランクがそのまま持ち上がります。
– 画像左 –
〈 Minolta ・A-2・ 〉
ボトムカバーの右手側にあるフィルムカウンター– 画像右 –
〈 minolta A3 〉
トップカバー上にあるフィルムカウンター
〈 Minolta ・A-2・ 〉
ボトムカバーの右手側にあるフィルムカウンター
〈 minolta A3 〉
トップカバー上にあるフィルムカウンター
〈 Minolta ・A-2・ 〉では本体の底面にあったフィルムカウンターは、〈 minolta A3 〉ではトップカバー上に移っています。
〈 minolta A3 〉のフィルムカウンターは窓から表示させる方式ではなく、回転する円盤に記された数値を指標によって読むようになっています。
デザイン性があり、コストも抑えられた仕様です。
– 左画像 –
〈 Minolta ・A-2・ 〉の裏蓋開閉タブ– 右画像 –
〈 minolta A3 〉の裏蓋開閉タブ
〈 Minolta ・A-2・ 〉の裏蓋開閉タブ
〈 minolta A3 〉の裏蓋開閉タブ
〈 Minolta ・A-2・ 〉のロック機構が蓋側にあるのに対して〈 minolta A3 〉は本体側にあります。
〈 Minolta ・A-2・ 〉のロックにはバネが効いていて、タブを引き下げてロックが解除された後は元の位置に引き込まれます。また、蓋を閉めるとバネの力で自動でロックされます。
〈 minolta A3 〉はタブにバネの力が効いていないので、引き下げたタブを手動で押し込んでロックする必要があります。
〈 minolta A3 〉の背面に設けられているフィルムインジケーター
〈 minolta A3 〉の取り扱い説明書( 8ページ )
- 〈 minolta A3 〉の取り扱い説明書には「 フィルムの感度について 」という項があり、フィルム感度の表示に用いられている〝 ASA / DIN 〟の用語から、市販のフィルム製品に記載されている〝 S , SS , SSS 〟の記号の意味までが丁寧に説明されていて、『 カメラ裏側のフィルムインディーケーター 』に対応している事が記されています。
〈 minolta A3 〉の背面には、撮影に使用しているフィルムの種類を、ディスク状のインデックスを回転して表示させるインジケーターが設けられています。
これは前年の1958年に発売された〈 minolta V2 〉、そして〈 SR-2 〉に新たに設けられた機能で〈 minolta A3 〉にも同じものが装備されています。
このスタイルのフィルムインジケーターは翌年の1960年に発売された〈 minolta A5 〉と〈 minolta V3 〉、そして1961年の〈 minolta AL 〉が装備しています。
レンズシャッター機では、〈 minolta AL 〉に取り付けられているのが最後になっていますが、一眼レフ機では1973年発売の〈 SRT SUPER 〉までの〝 SR 〟シリーズの各モデルに装備されています。
- 簡略化されている部分がある一方で、上位機種に採用された新しい機能が盛り込まれてもいます。
オートワイド12
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