〈 ライトバリュー : Light Value ( LV ) 〉の詳しい解説を紹介いたしませんが、実用上は “ シャッター速度と絞りの設定操作によって、露出量 が 2倍 もしくは 2分の1 になる設定変更を 1( 段 )として数値化したもの ” と説明できます。
設定する[ シャッター速度 ]と[ 絞り ]は、それぞれが[ 露光時間 ]と[ 露光量 ]の〈 倍数系列 〉となる設定値を扱います。
次の表はライトバリュー表です
○ 黒枠の縦列が「 シャッター速度(秒)」で、隣り合うベージュの枠内が対応するライトバリュー「 LV 」です。
○ 黒枠の横列はライトバリューに対応する「 絞り値( F )」で、露光量が半分ずつになる倍数系列になっています。
○ 白い枠内がシャッター速度と絞りの組み合わせの「 ライトバリュー( LV )」になっています。
シャッター速度と絞りをライトバリューに対応した数値として覚えてしまうと、簡単な暗算で設定の組み合わせを決定する事ができて非常に便利です。
〈 ライトバリュー・シャッター 〉 は、ドイツのシャッターメーカーの 《 デッケル:Deckel 》 によって1954 年に考案されたレンズシャッターです。
シャッター速度と絞りの設定が 〈 ライトバリュー 〉 に対応する 〈 倍数系列 〉 になっています。
1958 年に発売された〈 minolta auto wide 〉は〈 CITIZEN MVL 〉 というシャッターを搭載しています。
発売当時のリリースで 「 日本最初の本格的ライトバリューシャッター 」 として宣伝されたものです。
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〈 ライトバリュー・システム 〉 は 〈 ライトバリュー 〉 の原理で同じ露出量のシャッター速度と絞りの組み合わせを 〈 ライトバリュー・シャッター 〉 によって、設定変更できるものです。
ライトバリューの設定操作は、シャッター速度の値に絞りの値を足し算か引き算するような形の方法です。
設定したライトバリューが変わらない組み合わせで、シャッター速度と絞りの両方が同時に変更される仕組みになっています。
シャッター速度が一段上がると絞りが一段開かれる設定、もしくはその反対の設定操作となります。
〈 minolta auto wide 〉のライトバリュー・システム
〈 minolta auto wide 〉は 「 本体側にシャッター速度を操作する仕組みを持つレンズシャッター搭載のカメラ 」 という〈 Minolta .A. 〉系統のカメラに共通した特徴を備えています。
さらに〈 minolta auto wide 〉では絞りの設定操作をも本体側で行うようになっています。
その設定操作は、本体の背面にあるシャッター速度の設定ダイヤルと一体になった 「 ホイール 」 で行えるようになっています。
シャッター速度と絞りを操作するダイヤルとホイールには目盛や数値の表示は無く、それぞれの設定値はトップカバー上の小窓に表示されます。ライトバリューの表示は内臓した露出計の表示窓の中にあります。
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〈 minolta auto wide 〉は『 ライトバリュー・システム 』のカメラである事と併せて、内臓した露出計に追針式の設定連動を実現したカメラです。
詳しい設定方法は
– マニュアル –
で紹介しています
〈 minolta auto wide 〉は撮影設定の操作を内臓露出計に連動して行う事により、露出計で読み取った設定を、後からシャッターに移し替える操作を必要としないカメラです。
また、内臓露出計のメーターは追針を合わせる指標となるもので、数値などの指示をしません。
設定変更で動作する追針をメーターの指針に合わせる仕組みによって〈 minolta auto wide 〉 は 〈 ライトバリュー・システム 〉 を採用していながらも、設定にライトバリューの表示を必要としないカメラになっています。そして実際に、ライトバリューの表示が無い製品が製造されています。
〈 minolta auto wide 〉 は 〈 ライトバリュー・シャッター 〉 を搭載した 〈 ライトバリュー・システム 〉 のカメラですが、ライトバリューの表示 が 全く無い 製品があります。
詳しくは– バリエーション –
の項で紹介しています
〈 ライトバリュー・システム 〉 は、カメラへの露出計の搭載と連動の仕組みが自動制御へと発展していくなかで、その役目を終えていくことになります。
露出計を内臓したカメラの 〈 ライトバリュー・システム 〉 は、露出の自動制御 ( AE:Auto Exposure ) が発達すると移行していきました。
露出計を搭載しないマニュアル制御のカメラにおいては、設定したライトバリューで選択できないシャッター速度や絞りへの設定変更ではかえって手数が増える事や、連動にロックがあって解除が必要なものがある事などが厭われて、時を経ずして採用されなくなっていきました。
露出の決定を機械的な操作で扱える仕組みとして考案された 〈 ライトバリュー・システム 〉 は、露出制御の方法が確立されると、こうして姿を消していきました。
そして 〈 ライトバリュー(LV)Light Value : 光値(数) 〉 は、その原理が基礎となり 〈 エクスポージャーバリュー(EV)Exposure Value : 露出値 〉 へと発展するかたちで、露出制御の基本として応用されて姿を変えました。
〈 minolta auto wide 〉は内臓露出計への連動が発達する過渡期に、幾多のメーカーが取り組んだ試行錯誤のヴァリエーションの一つとして数えられます。
達成した内臓露出計への連動方法は追針式として分類されるもので、これを初めて実現していた事が特筆されるカメラです。
《 千代田光学精工 株式会社 》の内臓露出計連動カメラの開発は、同社が製造する既存のレンズシャッター機である〈 Minolta .A. 〉がベースとなりました。
〈 Minolta .A. 〉というカメラは、レンズシャッター機でありながらシャッター速度を鏡筒のリングではなく、本体にあるダイヤルで操作する仕組みを持っています。
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この機構に〈 ライトバリュー・システム 〉が組み込まれる事によって、本体のシャッター速度ダイヤルが絞りと連動する機能を持つ事になりました。
こうして開発された〈 minolta auto wide 〉は、シャッター速度の設定と絞りの設定を本体のダイヤルで操作するカメラとなりました。
そして、わずか2センチたらずの 『 絞り操作が出来るシャッター速度ダイヤル 』 という 〝 インターフェース 〟が創り出されました。
メーターを見ながらダイヤルをつまんで行う操作は軽くスムーズで、露出計の操作そのものだと思えるほどです。
メーターのとなりには、シャッター速度と絞りの値だけを表示する窓が別に設けられていて、細かい目盛りに合わせて指標を読む必要がありません。
《 千代田光学精工 株式会社 》 が自社のレンズシャッター機に 〈 ライトバリュー・システム 〉 を採り入れて開発した〈 minolta auto wide 〉は、このような偶然とも必然とも思える仕組みでシャッターを操作するカメラとなりました。
その後、 〈 ライトバリュー・システム 〉 が採用されなくなっていった事で、図らずも〈 minolta auto wide 〉は他には例の無い操作方法のカメラになりました。
後年、露出の自動制御が発達して現れた 〈 プログラムオート 〉 には、 〈 プログラムシフト 〉 の機能があります。
これは自動露出で決定された露出量を変える事なく、シャッター速度と絞りを撮影意図に応じて変更できるもので、 〈 ライトバリュー・システム 〉 で行う設定変更そのものです。
本体のダイヤルを使って行う〈 minolta auto wide 〉の 〈 ライトバリュー・システム 〉 は、内臓露出計に追針式のマニュアルで露出を合わせて行う 〈 プログラムシフト 〉 の操作だと言えます。
〈 minolta auto wide 〉は、追針式( 機械式 )による世界初の内臓露出計連動カメラとして、その名がかろうじて記録される過去の製品です。
その特異な操作方法は、ほとんど知られる事の無いものです。
シリーズの中で〈 ライトバリュー・システム 〉 を唯一搭載して、最後の〈 Minolta .A. 〉系統のカメラとなった〈 minolta auto wide 〉には、他のカメラでは切り拓く事が出来なかった 〈 ライトバリュー・システム 〉 の可能性が記録されているのかも知れません。
オートワイド12