〈 Minolta ・A-2・ 〉 は 〈 Minolta ・A・ 〉 の発展型として1955年に発売されたカメラです。
《 千代田光学精工 株式会社 》から 〈 Minolta ・A・ 〉 が発売されたのが 1955年の4月で 〈 Minolta ・A-2・ 〉 はその7か月後の同年11月の発売です。
〈 Minolta ・A・ 〉 からの主な変更箇所は、ファインダーが採光窓ブライトフレーム式に変更されている点で、シャッターを換装してスペックアップした事が大きな改良点となっています。
2つの機種はその後も並行して製造され、価格差があるスペックの異なるモデルとしてラインアップされました。
発売当初の 〈 Minolta ・A・ 〉 には内製の無銘シャッターが、〈 Minolta ・A-2・ 〉 には「 CITIZEN MXV 」がそれぞれ搭載されていますが、両機種とも改良とアップグレードが行なわれました。
スポンサーリンク
発売からほどなく 〈 Minolta ・A・ 〉 のシャッターも内製品から専業メーカー製となり、搭載された「 CITIZEN MX 」によってシャッタースピードの高速化とシンクロ接点の切替えが可能になります。
一方の 〈 Minolta ・A-2・ 〉 は「 CITIZEN MXV 」に換えて「 CITIZEN MV 」を搭載して、シンクロ接点の切替えとセルフタイマーのセット方法が改良されます。
また、撮影レンズを F 3.5 から F 2.8 にスペックアップしたモデルが発売されました。
どちらの機種も輸出仕様の製品が造られています。
輸出仕様の製品のなかには、『 OPTIPER 』ブランドのシチズン製シャッターを搭載している製品があります。
同じ機能の製品を比較した下の画像はその一例です。
– 画像左 –
標準仕様の CITIZEN MXV– 画像右 –
輸出仕様の OPTIPER MXS
標準仕様の CITIZEN MXV
– 画像左 –
CITIZEN MXV
シンクロ M 接点とセルフタイマーのセットレバー
機能表示を M V と並べて表記– 画像右 –
OPTIPER MXS
シンクロ M 接点とセルフタイマーのセットレバー
機能表示を M S と並べて表記
CITIZEN MXV
シンクロ M 接点とセルフタイマーのセットレバー
機能表示を M V と並べて表記
OPTIPER MXS
シンクロ M 接点とセルフタイマーのセットレバー
機能表示を M S と並べて表記
「 OPTIPER MXV 」という銘のシャッターを搭載している製品がありますが、「 CITIZEN MXV 」を搭載した製品とは操作が異なります。こちらは「 CITIZEN MV 」搭載の製品に準じています。)
〈 Minolta ・A-2・ 〉
「 OPTIPER MXV 」搭載の製品
1958年
〈 minolta auto wide 〉が 「 CITIZEN MVL 」による ライトバリューシステム を採用して発売されたこの年、〈 Minolta ・A-2・ 〉も「 CITIZEN MVL 」を搭載して製造されました。
「 CITIZEN MVL 」は〈 minolta auto wide 〉の操作機能を宣伝した広告で 「 日本最初の本格的ライトバリューシャッター 」 と謳われているもので、シャッター速度の設定値がライトバリュー方式の 『 倍数系列 』 になっている事を指したものです。
これは設定するシャッター速度の各段階が2倍の速さになっていて、露出時間を半分ずつに減らして行くものです。
それまでのシャッターとは下の比較のように異なります。
CITIZEN M(X)V : B 1 2 5 10 25 50 100 200 400 (1/s)
CITIZEN M V L : B 1 2 4 8 15 30 60 125 250 500 (1/s)
搭載シャッターを倍数系列の「 CITIZEN MVL 」にアップグレードした〈 Minolta ・A-2・ 〉は、「 シャッター速度ダイヤル 」と「 絞りリング 」の「 それぞれ 」に「 ライトバリュー 」を表示する事によって、「 ライトバリュー 方式 」の撮影設定を可能にしています。
次の表はライトバリュー表です
○ 黒枠の縦列がシャッタースピードで、隣り合ったベージュの枠内の数値がそのライトバリューです。
「 CITIZEN MVL 」を搭載した事でライトバリューへの対応を実現しています。○ 黒枠の横列はライトバリューに対応する絞りのF値で、露光量が半分ずつになる系列になっています。
製品では絞り操作によって各設定値にクリックストップします。
解放F値の違いがありますが、これは従来のモデルと変わりはなくライトバリューにそのまま対応しています。
「 CITIZEN MVL 」を搭載してシャッター速度の系列が〈 ライトバリュー:Light Value( LV )〉に対応した製品には、シャッターダイヤルに「 設定速度 」と「 LV値 」が併記されています。
– 画像左 –
CITIZEN MVL 搭載以前のシャッターダイヤル– 画像右 –
CITIZEN MVL 搭載のシャッターダイヤル 距離基準マークの近くにある ● マークがシャッターダイヤルの指標です。
CITIZEN MVL 搭載以前のシャッターダイヤル
CITIZEN MVL 搭載のシャッターダイヤル
それまでは垂直だったダイヤル前方の正面側に角度がついて、シャッター速度に対応したライトバリューが記されています。
「 CITIZEN MVL 」を搭載してシャッターダイヤルにライトバリューが記された製品には、シャッター速度とライトバリューの指標として ● マークがそれぞれダイヤルの上下にあります。
- 「 CITIZEN MVL 」の搭載よって、 B と 1 〜 1/500(s) の倍数系列でのシャッタースピード設定が出来るようになりました。
- シャッターダイヤルの形状が変更されて、各設定速度に対応するライトバリューが併記されるようになっています。
垂直に取り付けられていて、トップカバーの開口部からその半分ほどが出ているスタイルのシャッターダイヤルは、垂直の横方向に回転させて操作します。
- シャッターダイヤルの表示速度に対応するライトバリューは、ダイヤルの正面側に記されています。
- 操作位置からの確認で数字が読めるように記されているライトバリューは、正面から見ると上下が逆さまに見えます。
「 CITIZEN MVL 」の搭載によって〈 ライトバリュー:Light Value( LV )〉方式での撮影設定を可能にした〈 Minolta ・A-2・ 〉の鏡筒には、絞り表示に「 LV値 」が併記されています。
– 画像左 –
「 CITIZEN MXV 」を搭載した製品の鏡筒
( F3.5 の製品 )
絞りの数値には指標を合わせる ○ 印があります。 – 画像右 –
「 CITIZEN MVL 」を搭載した製品の鏡筒
( F2.8 の製品 )
絞りの数値の下に「 LV値 」が併記されています。
「 CITIZEN MXV 」を搭載した製品の鏡筒
( F3.5 の製品 )
絞りの数値には指標を合わせる ○ 印があります。
「 CITIZEN MVL 」を搭載した製品の鏡筒
( F2.8 の製品 )
絞りの数値の下に「 LV値 」が併記されています。
- 鏡筒は2段重ねのような形で、一段目に距離表示があり二段目の表示が絞りの設定値になっています。
- ライトバリューを併記した製品には絞りの数値に指標を合わせる ○ 印がありませんが、操作では設定値にクリックストップします。
〈 Minolta ・A・ 〉 そして 〈 Minolta ・A-2・ 〉の絞り操作は、指標がある鏡筒先端の枠を回転させて行います。回転する枠の側面にある小さな ● マークが、絞りの指標になっています。
「 CITIZEN MVL 」を搭載した製品の鏡筒には「 絞り値:F 」の表記と、その各設定値に対応する「 ライトバリュー:LV 」が併せて記されています。
絞り値は従来から倍数系列になっていますが、撮影レンズが F3.5 から F2.8 へとスペックアップした事によって、解放を含めた設定値の全域が倍数系列となっています。
スポンサーリンク
階段状になった鏡筒の2段目に並ぶ〈 絞り値:F 〉表示の下に併記された数値が、各設定に対応した〈 ライトバリュー:Light Value( LV )〉です。
絞り値の表示でただ一つ、丸く白抜きされた背景に赤文字で記してある(11)は「 2点マーク撮影 」に用いる事を示したものです。
ここでいう「 2点マーク撮影 」とは、〝 焦点距離 〟 と 〝 絞り 〟のそれぞれを[ 焦点距離 = 5 m / 絞り(f) = 11 ]に設定したときの「 焦点深度 」が [ 2.5m 〜 ∞ ] となる事を利用して行う撮影方法の事です。
「 2点マーク 」のもう一点にあたる距離表示( 5 )も同様のスタイルでハイライトされています。
〈 Minolta ・A-2・ LT 〉のライトバリュー
〈 Minolta ・A-2・ LT 〉はレンズ交換を可能にした〈 Minolta ・A-2・ 〉のバリエーションモデルです。
カメラ本体に記された製品名に〝 LT 〟の表記は無く、交換レンズとして用意された専用の望遠レンズ[ TELE ROKKOR 100㎜ F4.8 ]とレンジファインダーを連動させるための補助部品が取り付けられている事が製品の特徴となります。
望遠レンズ用に 100㎜ の視野枠がブライトフレーム中央に追加されている以外は〈 Minolta ・A-2・ 〉との違いはありません。
この他にも、シャッターダイヤルがゼブラ仕上げになっている点を違いとして挙げる事が出来ますが、メーカーが提供したアフターサービスでの改造によってレンズ交換に対応した製品があり、その限りではありません。
– 画像左 –
シャッターダイヤル全体が黒色– 画像右 –
シャッターダイヤルがゼブラ仕上
シャッターダイヤル全体が黒色
シャッターダイヤルがゼブラ仕上
1958年に発売されたこのモデルには「 CITIZEN MVL 」が搭載されており、ライトバリュー式の撮影設定に対応しています。
シャッターダイヤルの速度表示と鏡筒の絞り表示のそれぞれには、設定値に対応する ライトバリュー が併記されています。
但し、アフターサービスの改修によってレンズ交換に対応した場合、改修を受けた製品の搭載シャッターによってはライトバリュー に対応していません。
専用の望遠レンズ[ TELE ROKKOR 100㎜ F4.8 ]の絞り表示にもライトバリューが併記されていて、ライトバリュー式の撮影設定に対応しています。
解放絞りの F 4.8 は、倍数系列の設定値を整数に置き換えて扱う ライトバリュー に対応していませんが、小数を含む換算値の 4.5 が記されています。
スポンサーリンク
レンズ交換の方法はスクリュー式で、絞りが組み込まれた撮影レンズの全群をビハインド式のシャッター機構から取り外せる構造を応用したものになっています。
[ TELE ROKKOR 100㎜ F4.8 ]の本体への取り付け部分は、本体のヘリコイド部分に記されている標準レンズ用の絞り表示を覆ってカバーする形状になっています。
〈 Minolta ・A-2・ LT 〉は、[ TELE ROKKOR 100㎜ F4.8 ]のフォーカシングを距離計と連動させるための改造が施された〈 Minolta ・A-2・ 〉であるといえる製品です。
製品として標準レンズと望遠レンズがセットになったキットが販売された以外にも、前述の通りレンズ交換に対応するアフターサービスが提供されて、交換レンズの[ TELE ROKKOR 100㎜ F4.8 ]が単品販売されています。
標準レンズとなる〈 Minolta ・A-2・ 〉搭載の撮影レンズを取り外した本体には、標準レンズを用いる場合に距離計と連動するヘリコイドが付いている事になります。
このヘリコイドに乗せるかたちで取り付ける望遠レンズを、本体のヘリコイド操作で距離計と連動させる働きを担うのが、エプロン部分に取り付けられたアーム状の部品です。
望遠レンズの前群部分にあるレールを、本体のアーム部分の位置に鏡筒のリングで固定するとカムが働くようになり、本体のヘリコイドが回転する動きで交換レンズの前群を直進式に繰り出す事ができます。この時、本体のヘリコイドも回転によって同時に繰り出されます。
本体側が回転式で望遠レンズ側は直進式で繰り出される動きは特徴的で、この全体の繰り出し量に距離計が連動する仕組みになっています。
望遠レンズを装着した時には、本体側の「 アーム 」とレンズ側の「 レール 」の働きによって本体側のヘリコイドの回転が最短撮影距離の『2m 』に制限されるようになっていて、操作上も距離計との連動は完全です。
の項でも紹介しています〈 Minolta ・A-2・ LT 〉
と
「 TELE ROKKOR 100㎜ f4.8 」
については– コラム –
〈 Minolta ・A-2・ 〉は、モデル名の通り〈 Minolta ・A・ 〉の発展型の製品です。
後継機種として〈 Minolta ・A・ 〉に取って代わったのではなく、《 千代田光学精工 株式会社 》のエントリーモデルのなかのスペックバリエーションとして、製品ラインナップに加えられたかたちで展開されています。
両モデル共に発売以降も改良が重ねられ、メーカーの標準仕様を押し上げるように随時更新されました。
〈 Minolta ・A・ 〉 は1957年までに製造を終えましたが、〈 Minolta ・A-2・ 〉は「 CITIZEN MVL 」を搭載してライトバリューに対応した製品が 1958年に製造されます。
さらにレンズ交換を可能にしたモデルまでがラインナップされて、ここでも上位機種で実現している機能をエントリーモデルとして可能にています。
そして、翌年の1959年8月 に〈 minolta A3 〉が発売されます。
モデル名にある 『 A3 』 が〈 Minolta ・A-2・ 〉の後継機種である事を思わせる〈 minolta A3 〉は、その姿も操作方法もそれまでの〈 Minolta ・A・ 〉系統のモデルからは一新されています。
また、レンズの繰り出しが回転式から直進式のヘリコイドになって、焦点合わせと絞りの操作性が向上しています。
シャッターは、 B、1 〜 1/500(s)倍数系列の「 OPTIPER CITIZEN MVL 」を搭載して〈 Minolta ・A-2・ 〉最終モデルからのスペックを踏襲しています。
一方で、採光窓式ブライトフレームにスペックアップしていたファインダーは、明るさで劣り自動パララックス補正機能がない反射鏡式に簡略化されるなど、低価格化が図られています。
1959年発売〈 minolta A3 〉
デザインと操作方法が一新され、基本性能と価格のバランスがとられたスペックの〈 minolta A3 〉は、エントリーモデルとして新たなベーシックスタイルを打ち出そうとしたように見えます。
〈 Minolta ・A-2・ 〉と〈 minolta A3 〉
の
モデルチェンジについては
で紹介しています
1955年の発売から《 千代田光学精工 株式会社 》のスタンダードスペックを示すように種々のアップデートをして製造された〈 Minolta ・A-2・ 〉は、「 CITIZEN MVL 」の搭載によって ライトバリュー 方式での撮影設定への対応も果しました。
いくつものメーカーから数多くの普及製品が発売され、僅かな改良が新しい製品によって次々と置き代えられていた時期に〈 Minolta ・A-2・ 〉は高級機やフラッグシップモデルでは容易に出来ない試みや、改良が重ねられて着実な進化を遂げていました。
そして 1959年の〈 minolta A3 〉の登場とそれに続く製品によって、〈 Minolta ・A・ 〉系統のモデルはその役目を終えて行きました。
オートワイド12
スポンサーリンク
スポンサーリンク